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クーロンポテンシャルによる散乱(量子力学)

詳細


本稿では概要だけを説明し、導出過程や詳細は以下のpdfで説明します。
https://slpr.sakura.ne.jp/qp/wp-content/uploads/2021/08/scattering_coulomb.pdf

概要


電荷\(q_A\)を持つ原子核に、遠方から\(q_B\)を持つ電子が衝突する過程を考えます。
例えば、水素原子の原子核である陽子1個(\(q_B=+e\), eは電気素量)に対し、遠方から電子(\(q_A=-e\))が衝突する過程です。
図で表せばこのような感じです。

相対座標に対する時間依存しないシュレーディンガー方程式は、

と書くことができます。ここで、\(\hbar\)はプランク定数、\(\varepsilon_0\)は真空の誘電率、\(\mu\)はAとBの換算質量を表し, \(E\)は衝突のエネルギーを表します。
簡単にするために係数をまとめて

と書きます。ここで、

という量を定義しました。
これから、波数\(k\)で定義される平面波が入射したらどのように応答するか?を知りたいので、式(1)を境界条件

の下で解いていきます。

導出した結果は、

となります。この展開は\(|r-z|\to 0\)となる\(z\)軸上もしくはz軸近傍では使えないことを注記しておきます。元々の境界条件(4)は、\(z\to -\infty\)だけで決まっており\(x,y\)には条件はありませんが、結論として得られるものは\(z\)軸からは離れた領域でなければならない、とより制限された範囲でのみ導ける、となっています。

ここで

であり、\(\gamma\)はSommerfeld parameterと呼ばれる量であり、\(\nu=\frac{\hbar k}{\mu}\)は2粒子間の相対速度を表しています。また、

はクーロン散乱振幅と呼ばれる量であり、波数\(k\)を持って入射した平面波が、入射方向に対して角度\(\theta\)方向にどれだけ球面波が歪むか?を表す量です。

導出過程や詳細は以下のpdfで説明しています。
https://slpr.sakura.ne.jp/qp/wp-content/uploads/2021/08/scattering_coulomb.pdf

本稿では、散乱状態の導出にとどめております。
解釈、流束などについては、次回説明します。

古典的な一次元波動方程式のグリーン関数

本稿のpdfはこちらをどうぞ
https://slpr.sakura.ne.jp/qp/wp-content/uploads/2021/08/Green_1dclassical5.pdf

問題


古典的な一次元波動方程式で、非斉次項を持つ問題

を解くことを考えます。この形は、有限範囲内しか相互作用を引き起こさない物に十分遠方から波が入射してきた場合を考える際に現れたりします。

この形の方程式が出てくる状況を考えてみましょう。

の問題を考えます。移項して

ですので、グリーン関数を用いると

となります。ここで、

を満たす関数(一般解)であり、グリーン関数を
で与えられます。ここを満たす関数(特殊解)としました。
式(4)の右辺に解\(f(x,t)\)が含まれていますが、このままの形でとどめておきます。この形にしておくと、ほかの式に\(f(x,t)\)をダイレクトに代入できたり、近似を使うときに便利な形です。

(式(7)はありません)

本稿の目的は、\(\hat{D}\)が\(\hat{D}=\frac{\partial^2}{\partial t^2}-a\frac{\partial^2}{\partial x^2}\)で与えられている場合に、\(G(x,t; x’,t’)\)の具体的な形を導出することです。

導出


今、解きたい問題は、

です。デルタ関数をそのまま扱う場合、積分が絡んでこないと扱うのが難しいです。そうでなければ、フーリエ変換を用いて波数・周波数空間で解いていくのが良いでしょう。グリーン関数や、デルタ関数のフーリエ変換を考えると

となります。ここで、基底関数が\(e^{ikx}, e^{-i\omega t}\)と符号が異なることに注意しましょう。
また、積分区間はいつも負の無限大から正の無限大であり、いちいち書くのは面倒なので省略しています。
フーリエ変換として考えるのではなく、基底関数へ射影した時の係数と考えましょう。

実際に式(8)に代入すると

となります。

ここで\(e^{i[k(x-x’)-\omega(t-t’)]}\)はゼロにならないので、その前の項[ ]内がゼロにならなければなりません。よって

が導けます。よって式(9)に代入して

が計算できれば位置と時間のグリーン関数が得られます。

さて、この積分を計算してみましょう。
右辺の\(e^{i\omega t}/\omega\)の形を持つ積分は複素関数論において頻出する積分です。この積分の特徴として、\(\omega\)に渡る積分を実軸上で実行する際に、たまたま\(\omega=\pm \sqrt{a}k\)に等しい点を通ってしまうため、実軸上では被積分関数が発散する、という特徴があります。この発散する点は極と呼ばれており、積分を行う際に積分経路をうまく選んで極を迂回しなければなりません。しかし、厄介なことに極を上に回るか下に回るかで積分結果が変わってしまいます。

もし、天才でしたら当たり前のように適切な積分経路をすぐに思いつくでしょうが、我々凡人には具体的に試してみるくらいしか思いつきません。ですのでちょっとズルしながら因果律を満たす解を探しましょう。

今、我々はグリーン関数について考えています。ということは、計算した結果の境界条件は、因果律を満たすような結果が欲しいわけです。
つまり、グリーン関数が得られた場合、$\theta(t-t’)$の形が出てくるであろうことは予想できます。そのため、これを考慮して極を回る方向を考えてグリーン関数を求めていきましょう。

式(14b)の第一項

について考えます。ヘヴィサイド関数を積分表記で表すと、

と書けることを使います。ここで\(i\)は虚数単位です。もう嬉しいですね。かなり似通った形であることが分かるでしょう。
式(16)の形に持っていくためには変数変換を行えば良さそうです。つまり、極は上に回れば因果律を満たすグリーン関数が得られそうです。

では具体的に計算していきましょう。変数変換\(y=\omega+\sqrt{a}k\)を使って、

となります。分母に\(+i\varepsilon\)を加えるようにして

と求めることができます。

続いて式(14b)の第二項

についても同様に計算していきましょう。変数変換\(y=-\omega+\sqrt{a}k\)を使って、

ヘヴィサイド関数を考えると、

の形が使えそうです(式(16)の\(\omega\to-\omega\)の変数変換ですね)。ですので、

と求められます。

式(18c)と式(22c)より、式(14b)に代入すると

となります。

さて、\(\frac{\sin x}{x}\)の形はsinc関数と呼ばれているほど面白い性質を持つ関数です。そのフーリエ変換は矩形になることが知られています。その計算は実際に
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin(k)}{k}e^{ikx}\frac{dk}{2\pi}=\frac{1}{2}\Bigl[\theta(x+1)-\theta(x-1)\Bigr]
\end{align}
となります。

立ち戻り、変数変換\(\kappa=\sqrt{a}k(t-t’)\)を考えれば、

と、グリーン関数が求められました。グリーン関数は\(x-x’, t-t’\)の形をしていることが分かります。そのため、

と書いても良いことが分かるでしょう。ここで、

です。

まとめと補足


まとめ


まとめますと、偏微分方程式

の因果律を満たす解は、

となります。以上から、波動方程式

の因果律を満たす一般解は

となります。

補足


補足します。因果律を満たすグリーン関数である、ということが暗に意味される場合、積分(29a)の時間に渡る積分はグリーン関数に含まれるヘヴィサイド関数を先に利用して、

と積分範囲を組み込んで表記する場合があります。実際の例が式(29c)であり、その時間積分の積分範囲のようになることを見越している、ということです。

少しグリーン関数の物理的な意味を考えてみましょう。
グリーン関数は、ある特定の時刻、ある特定の位置でデルタ関数という非常に特殊な衝撃が生じた結果を記述します。
言い換えれば、偏微分方程式で表されている系が、デルタ関数によってどのような応答を起こすか?という関数です。

式(27b)を見てみると、1つのヘヴィサイド関数\(\theta(t-t’)\)と1つの矩形関数\(\text{rect}\left(\frac{x-x’}{2\sqrt{a}(t-t’)}\right)\)が使われています。
\(\theta(t-t’)\)の部分は、まさに因果律を示しており、衝撃が加わる前の時刻\((t-t’ \lt 0)\)においては系の応答は無いよ、ということを表しています。至極全うでしょう。

矩形関数の部分は、衝撃が生じた後にその衝撃は波及する範囲を表しています。具体的に、時刻\(t=t’\), 位置\(x=x’\)において衝撃が生じた場合、矩形関数の中身が値を持つ範囲は\([x’-\sqrt{a}(t-t’), x’+\sqrt{a}(t-t’)]\)の範囲です。つまり、衝撃が時々刻々と広がっていることを示しています。グリーン関数を図示すると、このような感じです。

衝撃が加わる\(t=0\)を境にグリーン関数が値を持ち始め、それが時間とともに広がっていくのが分かると思います。

ついでにグリーン関数の広がる速度を計算してみましょう。

矩形関数の中身が値を持つ範囲\(x\)は、時間\(\Delta t=t-t’\)の間に、距離\(x-x’=\pm \sqrt{a}(t-t’)\)だけ波及しますから、衝撃の結果が速度\(\pm\sqrt{a}\)で広がっていることが分かります。
これは、古典的な波動方程式でよく知られているように、系の速度が

の系の速度は\(\pm\sqrt{a}\)である、という事実と一致します。
つまり、衝撃が加わった時刻以外では、系そのものの性質しか存在しませんので、衝撃が波及していく速度が一致することは何ら不思議ではありません。むしろ、一致しなければなりません。

デルタ関数、ヘヴィサイド関数に関係する数式

本稿のpdfはこちら
https://slpr.sakura.ne.jp/qp/wp-content/uploads/2021/08/Green_related_functions1.pdf

定義


ヘヴィサイド関数

符号関数

矩形関数

デルタ関数

デルタ関数\(\delta(x)\)は、

を満たす関数です。この定義式を満たす場合、デルタ関数は以下の性質を持つことが分かります。

フーリエ関数

性質、関係式


積分表示

定積分が関係する場合


デルタ関数

ヘヴィサイド関数


sinc関数に関係する式

畳み込み積分


デジタル信号処理と偏微分方程式の関係

問題提起


デジタル信号で良く以下の図のように入力と出力が説明されます。

ここで疑問が生まれました。それは

  • 時間だけの関数であるならば、通過前後の位置はどこに記述されている?
  • 出力が、入力とシステムの畳み込み積分である根拠は?

です。通過位置については、どこにも位置が現れていないのです。また、畳み込みは確かに正しそうですが、どこから畳み込みが現れたのか根拠が分かりません。
これの解決を目指します。

本稿の結論は、散乱問題の考え方と同じで良い、です。つまり、

  • 位置と時間は、偏微分方程式の分散関係によって結び付いているので、時間又は位置について分かればもう片方は自動的に来まる。
  • 初期状態から終状態が生まれる際にグリーン関数を用いて書くことができるので、それが畳み込みの形となり、出力となる。

ということです。

序論


デジタル信号処理に現れる入力・出力を表す関数は何か?


波は偏微分方程式として記述されることが多く、基本的に波は位置と時間の関数として書かれます。
しかし、デジタル信号処理の分野では位置に関する表記を消去して時間のみの関数(時間信号)について解くだけで良し、とされます。
波はそもそも偏微分方程式ですので、何らかの仮定をおいて位置は考えなくて良し、としているはずですが、その仮定とは何なのでしょうか。
調べても『当たり前』とされている部分のようで、数式で示されている資料を見つけることができませんでした。

この疑問を詳しく説明します。
デジタル信号処理では、波と相互作用する何かを”システム”という言葉で表現し、その”システム”を特徴づける”インパルス応答”やそのフーリエ変換である”周波数特性”として扱います。
そして、”入力”と”システム”の相互作用を畳み込み積分した結果を”出力”として表します。
ここで私が疑問に思ったのは、

  • 「インパルス応答を用いて畳み込み、は妥当そうだが、それはなぜokなのか?」
  • 「現実には”システム”を通過する前後の位置という情報があるはずなのに、それはどこに行った?」

という2点です。

畳み込み積分が出てくる数学上の話はグリーン関数が想像されますが、やはり検索しても見当たらないので自分で導出を試みました。
いろいろ悩みましたが、以降の導出は私の導き、納得できた結論です。考え方は散乱問題と同じです。
つまり、畳み込みが出てくるということは非斉次方程式が出てきて、グリーン関数を用いて解が表される方程式があるということです。

導出


関係性の導出


波動方程式

を解くことを考えます。ここで、\(\hat{D}\)は位置\(x\)と時間\(t\)に関する微分演算子です。具体的に例えば
\begin{align}
\hat{D}=\frac{\partial^2}{\partial t^2}-a\frac{\partial^2}{\partial x^2}
\end{align}

みたいな感じです。相互作用を表現する\(s(x,t)\)の持つ性質として
\begin{align}\displaystyle
s(x,t)\Bigr|_{x\gt |a|}=0
\end{align}
を仮定します。

この仮定の下で、初期状態は\(x\lt -|a|\)の領域のみで波形が与えられると考えます。つまり、初期状態\(f_0(x,t)\)は

を満たす状態として与えられます。この条件下で、式(1)の解を

の形で探します。\(g(x,t)\)は未知の、これから求めたい関数です。
式(1)に代入すると\(g(x,t)\)について

を満たす関数として書けます。式(4)の解\(g(x,t)\)は

とグリーン関数を用いて書くことができます。ここで、\(g_0(x,t)\)は
\begin{align}
\Bigl[\hat{D}(x,t)+s(x,t)\Bigr]g_0(x,t)=0
\end{align}
を満たす解であり、\(G(x,t;x’,t’)\)は

を満たす解です。補足しますが、右辺を見ると\(x-x’, t-t’\)の形でしか存在しません。これはつまり、左辺のグリーン関数も\(x-x’, t-t’\)の関数になっていることを意味します。つまり、
\begin{align}
G(x,t;x’,t’)=G(x-x’,t-t’)
\end{align}
という形になっており、グリーン関数は4変数関数ではなく、2変数関数であることが分かります。どちらの表記でも構わないので適宜用いることにします。
もし初期状態が存在しない、つまり\(f_0(x,t)=0\)ならば\(g(x,t)=0\)が想定されるため、

でなければなりません。よって、

と書けます。ここで\(H(x,t;x’,t’)\)は

を満たす関数で、俗にいうインパルス応答を記述します。ここでもGと同様に
\begin{align}
H(x,t;x’,t’)=H(x-x’,t-t’)
\end{align}
と書くことができます。以上から、式(1)の解は

と書けます。ここで解の意味を考えます。右辺第一項は初期状態(入力)であり、右辺第二項は、初期状態が\(s(x,t)\)と相互作用した結果生じる相互作用項(出力)を意味します。

仮に初期状態が

とかけていた場合を考えます。式(10)の右辺第二項を計算すると

とまとめられます。ここで、

と定義しました。以上から、解は

となります。良く知られているように、波数空間(もしくは、初期状態を角周波数\(\omega\)の変数とするならば角周波数空間)で相互作用の結果は、相互作用(インパルス応答)のフーリエ変換 \(H(k,\omega(k))\)と初期状態のフーリエ変換との積となります。

位相速度、群速度とは!?調べてみました!!(パロディ)

近頃SNSやインターネットでよく見る言葉、「位相速度」「群速度」

元ネタや原理を分かった気になって使っている方、多いのではないでしょうか。
せっかくなので調べてみました!!!

  1. そもそも「位相速度」「群速度」って何?
  2. 学会騒然。ある波数近傍だけ値を持つ場合にテーラー展開!?
  3. 位相速度はどうやって!?驚きの仮定
  4. 簡単だと思いました?注意です!
  5. いろいろなところに群速度に関する議論が!
  6. 最後に
  7. Note

そもそも「位相速度」「群速度」って何?


なにはともあれwikipedia!!
関連するキーワードをササッと知るには強い味方です。
「位相速度」「群速度」を調べるとこのように説明されていました。

群速度(ぐんそくど、英: group velocity)とは、複数の波を重ね合わせた時にその全体(波束)が移動する速度のことである。

群速度 -wikipedia

位相速度(いそうそくど、英語: phase velocity)は、位相、すなわち波の山や谷の特定の位置が移動する速度のことである。

位相速度 -wikipedia

どうやら、波束波の速度を表現する際に都合が良い言葉なようです。

波束とは何なのでしょう…?また変な言葉が出てきました。wikipediaの出番です!!

波束(はそく、英: wave packet, wave train)は、局所的に存在する波うち/波動であり、移動する1個の波動の塊のようにふるまう。

波束 -wikipedia

うーん、つまり一回だけ波打って、ある程度まとまった波みたいなものですかね。
水面に水が一滴だけ落ちたときに発生する波みたいなものでしょう。

具体的にどういう意味なのでしょうか。気になりますよね!

皆さんも群速度、位相速度の導出が気になったら「tweet」、お願いします!

学会騒然。ある波数近傍だけ値を持つ場合にテーラー展開!?


角周波数が波数の関数として書けている場合、分散関係があるといいます。
つまり、角周波数\(\omega\)が波数\(k\)に依存して\(\omega=\omega(k)\)と書けている場合、波形のほとんどは

とように書けます!!
本来、位置\(x\)と時間\(t\)で書ける関数は、\(k\)と\(w\)の二重積分で表現されなければなりませんが、分散関係のおかげで\(\omega\)が強制的に決まってしまうので、一重積分で良くなるのですね!
うーん、とても嬉しい!!!!

…でも、あまりに一般的過ぎて分かりませんね。
しかし!!
応用で重要なのは、ゆっくり振動する包絡線早く振動する波掛け算で表されていることが多いのです。

つまり、これから考える波が持つ波数は、\(k= k_0\)の周りしか値を持たないのです。ここで、早く振動する波の波数を\(k_0\)と置きました。

\(k_0=5\)の場合、これから考えていく\(f(k)\)はこんな感じの特徴を持っています!ババン!

こんな特徴を持つのならば、\(k=k_0\)以外ではどうせ\(f(k)\to 0\)となるので、考えてもしょうがないっていう近似が使えそうですよね。

そ こ で !

波数\(k=k_0\)周りでいろいろテーラー展開して使用していきます。つまり、\(k=k_0\)の近傍さえ合っていれば、\(k_0\)以外でどんな振る舞いになろうとも\(f(k)\)がゼロになるので大丈夫でしょう!ということです。

早速、分散関係についてテーラー展開を行うと

となります。式を簡単に書くために\(\omega'(k_0)\equiv \frac{d\omega}{dk}\bigr|_{k=k_0}\)と置きました。

計算を進めると、

より、

のように書けます。つまり、式(4)が言っていることは、
時刻\(t\)の波形とは、初期状態\(t = 0\)の波形 \(f(x,0)\)を\(\omega'(k_0)t\)だけ平行移動させた波に、時間だけに依存する位相に関する変化分 \(e^{−i[\omega(k_0)−k_0 \omega'(k_0)]t}\)が掛け合わされたもの、と表すことができる。と言っています。

以上から、初期状態の波が時刻\(t\)に至るまでの速度は\(\omega'(k_0)\)で決まることが分かり、これは
群速度
と呼ばれます!!

位相速度はどうやって!?驚きの仮定


さて、ここまでで群速度が求まりましたが、位相速度が求められていません。
そこで、もう少し具体的な波の形を定義しましょう。
波が、

と書けている場合を想定します。ここで、振幅\(A(x,t)\)は実数値関数で波の包絡線を表しています。また\(A(x,t)\)の変化は \(k_0\) に比べて非常にゆっくり変化しているものとします。
つまり、

今まで考えてきた仮定が全部使える

んですね!

式(5)に代入しますと

となります。つまり、振幅の変化はいつも初期状態の単なる平行移動として表現することができ、位相の変化も簡単に表せられます。

そこで、振幅が平行移動する速度を群速度\(v_g\)、位相が平行移動していく速度を位相速度 \(v_p\) として定義すると、 式(6c) よりそれぞれ

と定義してしまうのが良さそうです!

簡単だと思いました?注意です!


注意しなければならないのは、群速度と位相速度の概念は、

振幅と位相を記述する部分がはっきりと区別できるような状況でなければ、定義できない

ということです!振幅部が早く振動していたら、これまでの議論が使えなくなることに注意しましょう。
その場合、群速度と位相速度の概念が変わってしまうので、意味をなさなくなってしまいます。

いろいろなところに群速度に関する議論が!


様々なところにリンクがあります。やはり皆、群速度の概念を理解するのに苦労しているようですね。

群速度の謎 -平林 浩一, (C) 2006

「yam@広島大」物理化学Monographシリーズ ”3. 物体の速度と物質波の速度 -E=hνの本質の理解-”

最後に


いかがでしたか?気に入ったなら是非、記事の下にある「like!」ボタンや「tweet」して皆さんに共有して下さいね!
それでは皆さん、良い物理ライフを!

Note


本記事の大枠の構成はいかがでしたか? -ニコニコ大百科を参照しています。

再学習用の電磁気学

電磁気学を可能な限り短くまとめました。電磁気学を一度学んだ方の再学習用を想定しています。
歴史を追うような考えをしていません。なので、証明には「なるからなる」を多く取り入れています。
経緯を知りたい方は各種参考書をご覧ください。

https://slpr.sakura.ne.jp/qp/wp-content/uploads/2021/02/electromagnetism.pdf

electromagnetism

間違いがありましたら、コメントなどいただけると助かります。

水素原子の原点に電子を見出すか?

問題


水素原子の電子の基底状態において、原点に電子を見出すことができるでしょうか?

問題設定


非相対論の範囲で、水素原子の電子を考えます。
電子の満たすシュレーディンガー方程式は、プランク定数\(\hbar\),電子の電荷\(e\),電子の質量\(m\)
をそれぞれ\(\hbar=1, e=1, m=1\)とする原子単位系で

と書けます。ここで、\(\nabla\)はデカルト座標系\((x,y,z)\)における微分演算子\(\nabla=\left(\frac{\partial }{\partial x}, \frac{\partial }{\partial y}, \frac{\partial }{\partial z} \right)\)であり、\(\psi(\mathbf{r})\)は波動関数を表します。
規格化は

で行います。特に、これから中心力に対する問題を考えていくので、球面座標系で変数分離を考えます。球面座標系において動径方向\(r(=\sqrt{x^2+y^2+z^2})\)と角度方向\(\theta(=\cos^{-1}(z/r)), \varphi((=\tan^{-1}(y/x)))\)の\((r,\theta, \varphi)\)座標における波動関数は

と書きます。ここで規格化は

とします。過程は飛ばしますが、シュレーディンガー方程式の固有値\(E=-1/2\)に属する基底状態の波動関数は、量子数\((n, l, m)=(1,0,0)\)を持つ状態として指定され、\(R(r)\)は

と書けます。\(\theta, \varphi\)方向の関数は\(Y_{0,0}=({4\pi})^{-1/2}\)ですので、波動関数は

となります。

さて、存在確率密度はどう考えればよいでしょう?
まず規格化から、

と計算されるわけですから、原点からの距離\(r\sim r+dr\)の範囲に電子を見出す存在確率密度\(f(r)dr\)の係数\(f(r)\)は

と書けます。

一方、存在確率密度は波動関数の絶対値二乗ですので、

ですから、位置\((x,y,z)\sim (x+\Delta x,y+\Delta y,z+\Delta z)\)の範囲に見出す確率\(g(x,y,z)dxdydz\)の係数\(g(x,y,z)\)は

と書けます。
さて、ここで疑問が生じます。原点\((x,y,z)=(0,0,0)\)において、電子を見出す可能性はあるのでしょうか?

つまり、動径方向の関数については原点における\(f(0)\)は式(8)より

であり、\(g(0,0,0)\)は式(10)より

と書けるのでどちらが正しいのか?本当に観測を行ったとき、原点で電子を見出すことはあるのか?

という問題です。つまり、グラフにすると以下のようになります。\(g(x,y,z)\)については、\(x=y=0\)としてグラフにしています。

これで注目するのは、原点における値がゼロか有限か?で大きく異なっている点です。

座標系が違うだけで物理が変わることはありませんので、これは解釈の問題です。
現実には原点には原子核があるので原点における電子を観測することはできないので、頭の中で考えます。
結論としては、どちらも正しくて解釈が異なる。そして、原点で電子を見出すことがあっても良いです。
その理由を述べていきます。

考察


まず、数値実験を行い事実を確認します。
デカルト座標系\((x,y,z)\)における波動関数\(\psi(\mathbf{r})=\frac{1}{\sqrt{\pi}}e^{-\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\)は紛れもない事実ですので、フォン・ノイマンの棄却法に従って、\((x,y,z)\)空間で一様な変数を作り出し、この確率密度に従った乱数を表示させます。すると以下のような図を得ます。

例えば\(x=0, y=0\)に固定してz軸上の波動関数は、

となりますので、\(z=0\)においてゼロではない有限の値をとるため確率密度が存在しそうなので、原点に電子を見出してもよさそうです。

続いて動径方向の分布を考えましょう。棄却法によって採用された\(n\)番目の点\((x_n,y_n,z_n)\)(図に表示されている点)の原点からの距離\(r_n=\sqrt{x_n^2+y_n^2+z_n^2}\)を調べてみます。そして、\(r\sim r+\Delta r\)の範囲にある点数を数え、観測された個数と原点からの距離の関数を考えます。これは動径分布関数の\(f(r)\)に等しいはずです。すると、以下のような図を得ます。

確かに、確率密度の係数にかかる分布\(f(r)\)になっていることが分かります(最大値を1にするように規格化しています)。

さて、以上の数値実験からやはりどちらも数式通りであり、正しいことが分かりました。
すると解釈の問題でしょう。どのように解釈していけばよいかを考えていきます。

まず動径方向の確率密度\(f(r)dr=r^2R^2(r)dr\)ですが、これは正確には

と書いたほうが良いでしょう。意味は、半径が\(r\sim r+dr\)の間を占める球殻の体積は\(4\pi r^2 dr\)であり、その体積の中に粒子の見出しやすさ\(\frac{R^2(r)}{4\pi}\)が掛かっている、という意味です。

半径が\(r\to 0\)の極限において、式を解釈すると、

球殻の体積がゼロのとき、その中に粒子を見出す確率はいくつか?

という問いになります。見出すことができる体積はゼロなので、体積ゼロの領域に電子を見出すことはできません。なので、

となります。すなわち、\(r^2 dr\)の部分がゼロになるだけで、\(R^2(r)\)の部分は値を持っていても良い、ということになります。少し詳しく言えば、球殻の体積がゼロの時に確率があると確率が無限大になってしまうので、少なくとも\(r\to 0\)で\(R(r)\propto r^{n},~(n>-1)\)であることが課されます。

以上の話が正しければ、原点では体積がゼロなので、電子を見出す確率\(r^2R^2(r)\)は\(r=0\)でゼロ、すなわち電子を見出さない、という結論になりそうです。

これまでの考察を行っても矛盾が生じたままで、何一つ解決していません。
「原点において電子を見出す体積がゼロだから、電子を見出せない」という結論が誤りなのか、もう少し疑ってみます。

体積がゼロでも電子を見出すことがあり得ることを仮定した場合、これはどういう意味を持つでしょうか。

2つの解釈を説明します。

  • 有限の大きさによって、本当の原点に電子を見出すことはない
  • 例えば将来的に超高精度な観測機器ができた場合、原点に電子を見出す場合にしても、現実ではどう頑張ってもプランク長(10^{-35}\mathrm{m})以上の分解能は無いはずです(電子の大きさもありますしね。しかもプランク長以下の長さは物理的な意味がないと言われています。一応、プランク長よりも短くなる長さがあるようですが、無限小よりかは大きいでしょう)。なので、原点に電子を見出した!と思っても、実は原点からほんのちょっとずれているのかもしれません。
    だから、本当の原”点”に電子は見出さないのかもしれません。

  • 点で電子を見出すか、密度を考えるかで区別しなければならない
  • 点自体に体積は無いので、確率密度がゼロだからと言って原点に電子を見出しても良い

二番目の点自体に体積は無いので、確率密度がゼロだからと言って原点に電子を見出しても良い、が正しいと思いますが…すみません。調べたりしたのですが、なかなか目当ての問題や解答がなく、探すのを諦めました。
存在確率密度なので、(体積中の電子を見出す確率)/(見出す体積)ですが、原点であればこの分母がゼロです。
この場合に、原点に電子を見出したからと言って、それは体積でも何でもない0次元の情報ですから、確率「密度」の情報に対応させることができません。なので見出しても問題がないと考えます。

一方、原点以外で波動関数の節となる確率密度がゼロになる点においては体積が有限であり、その点では本当に見出すことは本当の意味でありません。

結論


点自体に体積は無いので、確率密度がゼロだからと言って原点に電子を見出しても良い。

…で合っていると思いますが、明確な参考文献を見つけられませんでした。
メモとして、これまでの考察を書きました。

補足)カスプについて


一つ、本当の原点に電子を見出してしまった場合、ポテンシャルエネルギーが発散しないのか心配になります。
すなわち、ポテンシャルエネルギー項が\(-\frac{1}{r}\)であり、無限大になるので非物理的な気がします。

だからと言って、ポテンシャルエネルギーが発散するから非物理的である、という結論は間違いです。
この原点における発散はカスプ(Cusp)と呼ばれ、運動エネルギーの項と相殺するため、消えてしまう、もしくは消えなければなりません(カスプ条件)。カスプについて説明するために、もう一度シュレーディンガー方程式に立ち返って考えてみます。

左辺のハミルトニアンのポテンシャル項\(-\frac{1}{r}\)は\(r=0\)で発散しています。しかし束縛状態では、波動関数の二乗は電子の存在確率密度ですので、全空間で積分したら有限にならなければなりません。つまり右辺\(E\psi(\mathbf{r})\)は発散してはなりません。
以上から、\(\psi(\mathbf{r})\)は連続でなければならず、\(r=0\)で

を計算したら\(\frac{1}{r}\psi(\mathbf{r})\)の項が出てきてポテンシャルエネルギーの項を打ち消さなければなりません。
波動関数に課されるこの条件は、カスプ条件と呼ばれます。

エアガンの集弾限界

理想的なエアガンとBB弾、それに風などが無い理想的な環境があったとします。

この場合、

 30m先 | 直径3cm
 50m先 | 直径10cm

以下のばらつきに抑えることは構造的に不可能です(60cmのバレルで0.9Jで射出する場合)。

バレルとBB弾に直径差があることによって生じるこのばらつきを軽減するには、
 ・バレルの直径を小さくする
 ・バレルを長くする
 ・バレル内部の素材とBB弾の反発が起こりにくいものにする
にすることで軽減されます。


ここでの理想的とは、

・球の直径のばらつきは無い
・いつも同じ初速で撃ち出せる
・無風

とします。この場合でも同じ点に集弾することはありません。
なぜなら、バレルの直径とBB弾の直径が異なる為です。この差によってどの位集弾性が悪くなるのか、見積もりましょう。

これは構造的な問題であり、ばらつきの原因の中で取り除く事ができない1つの原因です。

ばらつく原因として、以下の三つが考えられますが、まず本稿では理想状態のばらつきを考えます。

ばらつきの種類 理想状態のばらつき(本稿) 製品誤差によるばらつき セッティングによるばらつき
BB弾重さ あり なし
BB弾の大きさ なし あり なし
回転のばらつき なし なし あり
手振れ なし なし あり

ばらつきが生じる原因


何故ばらつきが生じるかを考えましょう。
全くの理想であれば、銃口から同じ初速、角度、回転量で射出されたBB弾にばらつきが生じることはありません。
しかし、現実にはバレルの大きさとBB弾の大きさに差があります。これによって銃口から射出する時に進行方向と垂直な平面に速度を持つことになります。
銃口から出てきたBB弾の速度\(\mathbf{v}\)を以下のように表現します。

ここで、\(v_{z}, \mathbf{e}_{z}\)はバレルの方向に沿う速度、単位ベクトルで、
\(v_{x,y}, \mathbf{e}_{x,y}\)はバレルの方向に垂直な面への速度、単位ベクトルです。
すなわち、壁面に垂直な方向に対する速度ベクトルの大きさ\(v_\perp\)は、\(v_\perp=\sqrt{v_x^2+v_y^2}\)と表されます。

ばらつきが無くまっすぐ飛ぶのであれば\(v_{\perp}=0\)であり、そうでなければ\(v_{\perp}\ne 0\)です。

BB弾のばらつきが生じる原因は、射出方向に垂直な方向(横方向)に有限の速度が生じている、と仮定します。
この横方向の速度が生じる原因の一つは、ピストンでBB弾を空気で押す際に圧力が一定ではないとか、回転を掛けるためのゴムで生じる、などいろいろ考えられます。
ここでは、パッキンを通過して、もうこれ以上横揺れを増やすような原因が生じないのだ、と仮定します。壁の反射によって変化はあるものの、速度は減衰する一方であるとします。

それでは、定式化をしていきましょう。

定式化


横方向の速度はそれほど大きくないだろう、と予想するので空気抵抗は考えません。この条件のもと考えていきます。

バレルの直径\(d_s\)とBB弾の直径\(d_B\)の差があることによって、バレルに垂直な方向にBB弾が自由に進める距離\(l\)は

と書けます。\(n\)回目の衝突から\(n+1\)回目の衝突までにかかる時間\(t_n\)は、その間のBB弾の垂直方向の速度\(v_n\)に依存して、

と書けます。よって、\(N\)回衝突するのにかかる時間\(t\)はそれぞれの衝突までに掛かる時間を足し合わせればよいので、

です。バレルの内壁との衝突が起こることによってBB弾の速度の変化するとします。するとBB弾とバレルとの反発係数\(r\)を用いれば、

と表現されます。初速度を\(v_0\)と書いてこれを代入すれば、

と書くことが出来ます。ただし、\(r\ne 1\)です。\(r=1\)の場合は\(\displaystyle
t=\frac{l}{v_0}(N+1)
\)

です。\(r\ne 1\)の場合に\(N\)について変形すれば、

と書くことが出来ます。
初速\(v_0\)、反発係数\(r\), 銃口に到達するまでに掛かる時間\(t\)が分かれば、銃口から出た時のバレルに垂直な方向の速度\(v_\perp\)は式(5b)より、

と書けます。具体的に妥当な値を入れて射出時の、進行方向に垂直な方向の速度を計算してみましょう。

具体的な衝突回数の見積もり


60cmのバレル長を持ち、0.20gで0.9J程度の球が射出される場合、セットされた位置から射出までにかかる時間は約\(t=0.015\mathrm{[s]}\)と分かっていますのでこれを利用します(バレル内部の計算より)。
バレルBB弾の直径差は

とします。\(r\)はどうにかして求めることにして、\(v_0\)はとりあえず変数としましょう。

反発係数の見積もり


\(r\)を見積もります。
反発係数の見積もりは、実験して大雑把な値を見積もります。
\(r\)を見積もるために、家にある固い材質のものとBB弾とを衝突させて、高さを計測しました。以下の実測結果を得ました。

  • BB弾-フローリング 30cmから落として15cm上がる
  • BB弾-アクリル板 30cmから落として10cm上がる
  • BB弾-アルミ 10cmから落として6cmまで上がる

高さ\(h_0\)から静かに落として、反発した後に極大値をとるときの高さ\(h_1\)が分かっているとき、反発係数\(r\)は

と求められることが分かっているので、反発係数は

  • BB弾-フローリング  \(r\approx 0.71\)
  • BB弾-アクリル板  \(r\approx 0.57\)
  • BB弾-アルミ  \(r\approx 0.77\)

となります。バレル内部はどちらかといえば金属に近いと思いますので、\(r\approx 0.75\)と仮定して計算を進めていきます。

横軸に進行方向に垂直な方向の初速度…つまり、ホップを掛けるためのゴムなどで、進行方向ではない方向の速度のことを意味します…、縦軸に射出時の垂直な方向の速度をプロットしました。横方向の速度が仮に50m/sになっていても、10m/sになっていようともあまり変わらないことが分かります。なので、10m/sと仮定しましょう。
ばらつきの上限を与えるにはよい指標です(※1)。

仮に\(r=0.75, v_0=10\mathrm{[m/s]}\)とすると、\(N\approx 20.6\)と計算されます。つまり、20.6回バレルに衝突してから飛び出していくわけです。実際には衝突回数は整数しかありえないので、小数点以下を切り捨てて20回衝突が起こって飛び出していきます。
ただし計算を行う上では衝突回数を切り捨てると不連続性が発生しますので、小数点の衝突回数を認めることにします。

この場合、銃口から飛び出す際の、進行方向に垂直な方向の速度\(v_\perp\)は

を得ます。この垂直方向の速度は上下左右に振れる可能性がありますが、最も触れる場合は横方向でしょう。

30, 50m先の広がり具合を考えます。
着弾までの時間\(t_{30m}, t_{50m}\)はそれぞれ\(0.5, 2 [s]\)分かっているので(弾道計算(BB弾)の結果)、着弾時の直径\(d_{30m}, d_{50m}\)は

と求められます。ここで垂直方向の速度が非常に遅いので、空気抵抗は無視して考えています。BB弾の重さは関係ありません。軽いものほど空気抵抗を受けて減衰するので、ぶれは小さくなります。

空気抵抗を考慮すると、これよりは小さくなるということです。

実測定との比較


さて、30mチャレンジというものがあります30mチャレンジ公式ランキング 2016年度
この記録によると、30m先で直径15cm程度の範囲に収まるようです。
すなわち、バレル-BB弾の直径差による集弾性の悪化よりも大きな影響を及ぼす要因がある、ということです。

恐らくは回転量が一定ではないとか、BB弾の重さにばらつきがあったり、銃身の振動があったりという要因のほうが大きいということでしょう。

逆に言えば、スタンダードな大きさのバレルとBB弾を用いる限り、30m先で3cm以内に収めることは不可能、ということです。

注釈

※1
\(v_0\to \infty\)で射出時の速度\(v_\perp\)は発散しますが対数の発散です。非常にゆっくり発散するため、\(v_0=10\)であろうが\(v_0=50\)であろうがほとんど変化しません。どこかでカットオフ(これ以上はとらない上限)となるような値を取れればよいかもしれません。
豆知識ですが、対数の発散をほとんど無視する目的としてカットオフを設けるやり方は、量子力学の繰り込み論が有名ですね。だからと言って、エアガンの計算で量子力学が現れる!などは言わないでください。全く関係ありません

波動関数の規格化とは?

非相対論的シュレーディンガー方程式の解を規格化するお話

Q氏とR博士の会話1


Q「波動関数の規格化は、なぜ行われるのでしょうか?」

R「異なる量子数に属する状態間を、分かりやすく比較したいからだ。」

Q「なぜ規格化をすると比較ができるのでしょうか?」

R「例えば、有限区間内で定義される2つの状態があるとき、片方の状態の波動関数の値が1、もう片方が0.01という、どちらも単なる定数であることが分かったとしよう。」
R「その場合、規格化を行わないと、”値1を持つ状態のほうが多いから、もう片方は無視できる”、と直感的にしてしまうかもしれない。」
R「その点、規格化をすればどちらも同じ値にできるから、優劣がなく比較をすることが直感的にできて、都合がよい。」

Q「なるほど。わかりやすさ、ですか。」
Q「しかし規格化するといっても、何かを等しくして比較するって意味ですよね。何を等しくして比較するのですか?」

R「個数で規格化するのだ。」
R「1つの電子について解いているとき、波動関数が示す電子数を”1”であるようにするのだ。」

Q「個数で規格化するのですか。では、2個の電子を表す1つの波動関数があったらどうです?規格化は”1”ですか、”2”ですか?」

R「どちらも正解だ。1でもいいし、2でもいい。」
R「2個の電子が相関して離れない現象ならば、それは”1つのペア”を”1”にするのが良いだろう。だから、その意味ならば1が良い。」
R「しかし、電子”1つ”が重要ならば、電子1つの波動関数を”1”にするべきだろう。それが2つあるので合計数は2だ。」
R「定義が書いてあれば、それでよい。」

Q「見たい現象によって分けるのですか。規格化と言いながら、いかなる問題に対する規格は無いのですね。」

Q氏とR博士の会話2


Q「波動関数の規格化は”個数”で行われるんですよね。」

R「そうだ。」

Q「波動関数の”個数”は全存在確率密度を1にするようにすることで実現できます。」

R「そうだ。」

Q「つまり、波動関数の絶対値の二乗の、全空間に渡る積分が収束しなければならない。」

R「その通り。」

Q「ならば、自由粒子のような連続状態の規格化は不可能なのですか?」
Q「無限遠まで振動していますし、絶対値の2乗は定数です。」
Q「全位置空間に渡る積分は無限になり、規格化定数が零になります。」

R「可能だ。だが、君の疑問はもっともであり、計算自体は正しい。」
R「しかし、全存在確率密度による規格化には隠れた前提がある。」
R「それは”束縛状態であるならば、全存在確率密度で規格化すると都合がよい”ということだ。」
R「連続状態はその前提に入らない。なので全存在確率密度による規格化が計算不能でも、何も問題はない。」

Q「では連続状態の規格化とは、なんなのでしょう?」

R「計算が楽だとか、都合がよい…例えば、計算したら有限の値になる何か、があれば何で規格化しても良い。」
R「束縛状態において、全存在確率密度はたまたま採用されたのだ。」
R「本来、規格化は数学的な手順であり、”分かりやすい表現”の定数倍という表現をしたいがために生まれた。」
R「何で規格化するのか?が変わったところで、定数倍の違いしかないから、物理は変わらない。」
R「自由粒子のような連続状態の規格化は、通常、デルタ関数で行われる。」
R「しかし、例えば”指数関数の係数を1にするように決めた”と主張して、物理を作り上げても何も問題はない。」
R「この例は任意性があるので、褒められない規格化だがね。」

Q「規格化が連続状態と束縛状態で違ってもよい、ということですか。」
Q「しかし、それでは連続状態と束縛状態で規格化した関数が、その境界で不連続になってしまうかもしれませんが、問題ないのですか。」

R「問題ない。連続状態と束縛状態を別々に規格化すると約束するならば、不連続でも問題ない。」
R「一方で、束縛状態でも連続状態でも統一的な規格化の方法を採用すれば、不連続性は起こらず、すっきりする。」
R「そのような規格化方法として、例えば波動関数を単なる2乗で規格化する方法がある。」
R「この場合は波動関数を複素平面に解析接続しなければならなくなるが。」

連成振動

弦を考えます。弦は重さ\(M\), 長さ\(L\), ばね定数\(K\)を持ちます。

この弦を波動方程式に頼らないで定式化しましょう。
波動方程式は、2次元の波動のうち、1次元分の方向を\(y=y(x, t)\)として表現するため、x軸にとって多価関数となる弦を表現することが出来ません。物性物理学等で格子の振動を考える場合は、結晶を構成する原子が平衡位置から殆ど動かないのでこういった問題は起こりません(起こったとしても無視される位少ないので、大多数の振る舞いを考える場合には問題になりません)。
よって多次元の問題を考えるには波動方程式を元にして考えるのは不適切です。そのため、弦を単なる連成振動として考えて、完全に2次元の問題として扱いたいと思います。

図のような連成振動のモデルを考えます。

質量\(m\)を持つ\(i\)番目の質点が、位置ベクトル\(\mathbf{x}_i\)で指定され、隣り合う質点との間が、ばね定数\(k\)、自然長\(l\)を持つ理想的なばねで繋がれているとします\((i=1,2,\cdots, N)\)。この時、運動方程式を立てると
\begin{eqnarray}
m\frac{d^2 \mathbf{x}_i}{dt^2}&=&
+k(|\mathbf{x}_{i+1}-\mathbf{x}_{i}|-l) \frac{\mathbf{x}_{i+1}-\mathbf{x}_{i}}{|\mathbf{x}_{i+1}-\mathbf{x}_{i}|}
-k(|\mathbf{x}_{i}-\mathbf{x}_{i-1}|-l)\frac{\mathbf{x}_i-\mathbf{x}_{i-1}}{|\mathbf{x}_i-\mathbf{x}_{i-1}|}
\end{eqnarray}
となります。全く同じですが、見通しをよくするため式変形すれば、
\begin{eqnarray}
m\frac{d^2 \mathbf{x}_i}{dt^2}&=& k\Bigl[A_i \mathbf{x}_{i+1}-\bigl(A_i+A_{i-1}\bigr)\mathbf{x}_{i}+A_{i-1} \mathbf{x}_{i-1}\Bigr]
\end{eqnarray}
と表せます。ここで、
\begin{equation}
A_i = \frac{|\mathbf{x}_{i+1}-\mathbf{x}_{i}|-l}{|\mathbf{x}_{i+1}-\mathbf{x}_{i}|},~~(i=1,\cdots, N, A_N = 0)
\end{equation}
と置きました。

さて、こうしたモデルを考えた時に、連成振動として考えた\(N\)分割した1つ1つの小さいばね(”ミクロなばね”と名づけます)とその弦を1つにみなした時の大きなばね(”マクロなばね”と名づけます)の間の関係式を考えましょう。
仮定として、等間隔に分割し、弦の密度は一様であるとします。

この条件の下で、
マクロなばねの重さ\(M\), 自然長\(L\), ばね定数\(K\)

ミクロなばねの重さ\(m\), 自然長\(l\), ばね定数\(k\)
の間の関係式を導出します。

結論として、マクロとミクロなばねの間に成り立つ関係は
\begin{eqnarray}
L&=&N l \\
M&=&N m \\
K &=& k/N
\end{eqnarray}
となります。

自然長

自然長\(L\)の弦を\(N\)分割するので、
\begin{equation}
L=N l
\end{equation}
の関係があります。

重さ

重さ\(M\)の弦を\(N\)分割するので、
\begin{equation}
M=N m
\end{equation}
と書けます。

ばね定数

最後にばね定数の関係を考えましょう。この関係は、弾性エネルギーを考えることで導くことができます。
マクロなばねとして全体を見た場合に長さ\(D\)だけ縮んだ時に蓄えられる弾性エネルギーと
同じだけ縮んだ時にミクロな\(N\)個のばねに蓄えられる弾性エネルギーが同じであってほしいと要請します。すなわち、ミクロなばねの縮みの合計がマクロなばねの縮み\(D\)に等しいとすると、
\begin{equation}
D=N d
\end{equation}
と書けます。
実は、大胆な過程をしないとマクロなばねとミクロなばねの関係を求めることが出来ません。
なぜなら、マクロなばねはいつでも線形応答をするかのように現在考えていますが、ミクロなばねでは場所ごとに違っても良いという様に定式化しています。なのでもともと無理な話なのです。
ではどうやって妥当な関係式を導出すればよいかといえば、ばねが非常にゆっくり運動が行われるときを仮定するのです。ゆっくり動くときの振る舞いは全てのばねが同じ動きをするとして差し支えないでしょう。そうして定式化します。
よって、
\begin{eqnarray}
\frac{1}{2}K D^2 &=& N\cdot \frac{1}{2} k d^2 \nonumber \\
\to ~~ K &=& k/N
\end{eqnarray}
という関係式が導けます。

あとは数値計算を行うだけです。陽的ルンゲクッタ法で解いたプログラムを以下に示します。

https://slpr.sakura.ne.jp/qp/supplement_data/wave_particles.tar.gz

実行は、

$ gfortran rkf45.f90 main.f90
$ ./a.out

でokだと思います。初期状態や、重さや自然長はinputファイルを見てください。

実行後、動画をgnuplot上で出力したければ、

$ gnuplot
$ call "movie.plt" 100

としてください。100は表示する時間ステップを表します。この引数の値の最大はinputファイルの中のNtまでです。

数値計算結果


実際に数値計算を行う条件として、自然長や重力があると波動方程式と若干異なる振る舞いになってしまうので、対応を見る上ではなくしています。すなわち、自然長\(L=0\)、重力\(g=0\)として計算します。

三角パルス

三角形の波がパルス状に存在するとします。
そして初期状態として、初速度がゼロであることを仮定しましょう。

この場合、波動方程式の考察から、
同じ関数であらわされる右向きの波\(f(x-vt)\)と左向きの波\(f(x+vt)\)の重ね合わせとして書かれることが分かっています。すなわち、解\(y=y(x,t)\)は
\begin{equation}
y(x,t)=f(x-vt)+f(x+vt)
\end{equation}
と書かれます。図で表せば以下のように時間発展していくことが期待されます。

これが本稿の連成振動モデルで実際にそうなっているのかを確かめるのは良い問いかけでしょう。
実際に連成振動を数値的に解くと以下の通りになります。

ゆっくりと時間発展を見ていくと

となります。明らかに右向きに進む波と左向きに進む波として分離します。分離した結果から、初期状態がそれらの波の重ね合わせで表現されていたことが分かるでしょう。

矩形パルス

矩形パルスを考えてみます。実際に数値計算をするとこんな感じです。

結局右向きと左向きの重ね合わせとしてあらわされることも確認できますが、決して単純なそれらの足し合わせで書かれているわけではないことがわかります。この振る舞いは、波動方程式に対応するように連成振動モデルを作っていないことから由来します。波動方程式としてあらわした二階微分の偏微分方程式の場合は多価関数をとることができません。なので縦に弦が伸びる場合、間に質点を置くことができないので質点の位置がいきなり飛ぶことになります。しかし、連成振動モデルではその制約をして初期状態を準備しているわけではありませんのでその違いが出て来ます。図で表せば、以下のようになります。

両者の違いがあるので、波動方程式の結論である
\begin{equation}
y(x,t)=f(x-vt)+f(x+vt)
\end{equation}
が成り立っていない、と解釈することができます。

少しずつ時間発展をみるとこの通りになります。

三角形の波

端まで三角形のパルスであった場合にどのように振る舞うかを見てみましょう。特に面白い振る舞いがあるわけではなく、上のパルスの、右向きと左向きの波の重ね合わせで説明ができるので、単にシミュレーション結果を載せるだけにとどめます。実際に計算してみると以下のようになります。

星形

初期状態が星型である場合も見てみましょう。振る舞いも同じです。

注意点としては、実際にこの振る舞いは起こりえないことに注意しておきましょう。なぜなら、本当の弦で行った場合、重なる場所があると弦の衝突が起こります。しかし、この連成振動モデルでは計算上、衝突は起こりません。

偏りがある三角形のパルス

偏りがある場合も波動方程式では記述することができません。こんな感じの初期状態です。

これを実際にシミュレートすると以下の通りになります。

3次元の場合

3次元の場合も載せておきます。ふるまい自体はそんなに変わるわけではないので、シミュレーション結果を載せるだけにとどめておきます。