波動関数の規格化とは?

非相対論的シュレーディンガー方程式の解を規格化するお話

Q氏とR博士の会話1


Q「波動関数の規格化は、なぜ行われるのでしょうか?」

R「異なる量子数に属する状態間を、分かりやすく比較したいからだ。」

Q「なぜ規格化をすると比較ができるのでしょうか?」

R「例えば、有限区間内で定義される2つの状態があるとき、片方の状態の波動関数の値が1、もう片方が0.01という、どちらも単なる定数であることが分かったとしよう。」
R「その場合、規格化を行わないと、”値1を持つ状態のほうが多いから、もう片方は無視できる”、と直感的にしてしまうかもしれない。」
R「その点、規格化をすればどちらも同じ値にできるから、優劣がなく比較をすることが直感的にできて、都合がよい。」

Q「なるほど。わかりやすさ、ですか。」
Q「しかし規格化するといっても、何かを等しくして比較するって意味ですよね。何を等しくして比較するのですか?」

R「個数で規格化するのだ。」
R「1つの電子について解いているとき、波動関数が示す電子数を”1”であるようにするのだ。」

Q「個数で規格化するのですか。では、2個の電子を表す1つの波動関数があったらどうです?規格化は”1”ですか、”2”ですか?」

R「どちらも正解だ。1でもいいし、2でもいい。」
R「2個の電子が相関して離れない現象ならば、それは”1つのペア”を”1”にするのが良いだろう。だから、その意味ならば1が良い。」
R「しかし、電子”1つ”が重要ならば、電子1つの波動関数を”1”にするべきだろう。それが2つあるので合計数は2だ。」
R「定義が書いてあれば、それでよい。」

Q「見たい現象によって分けるのですか。規格化と言いながら、いかなる問題に対する規格は無いのですね。」

Q氏とR博士の会話2


Q「波動関数の規格化は”個数”で行われるんですよね。」

R「そうだ。」

Q「波動関数の”個数”は全存在確率密度を1にするようにすることで実現できます。」

R「そうだ。」

Q「つまり、波動関数の絶対値の二乗の、全空間に渡る積分が収束しなければならない。」

R「その通り。」

Q「ならば、自由粒子のような連続状態の規格化は不可能なのですか?」
Q「無限遠まで振動していますし、絶対値の2乗は定数です。」
Q「全位置空間に渡る積分は無限になり、規格化定数が零になります。」

R「可能だ。だが、君の疑問はもっともであり、計算自体は正しい。」
R「しかし、全存在確率密度による規格化には隠れた前提がある。」
R「それは”束縛状態であるならば、全存在確率密度で規格化すると都合がよい”ということだ。」
R「連続状態はその前提に入らない。なので全存在確率密度による規格化が計算不能でも、何も問題はない。」

Q「では連続状態の規格化とは、なんなのでしょう?」

R「計算が楽だとか、都合がよい…例えば、計算したら有限の値になる何か、があれば何で規格化しても良い。」
R「束縛状態において、全存在確率密度はたまたま採用されたのだ。」
R「本来、規格化は数学的な手順であり、”分かりやすい表現”の定数倍という表現をしたいがために生まれた。」
R「何で規格化するのか?が変わったところで、定数倍の違いしかないから、物理は変わらない。」
R「自由粒子のような連続状態の規格化は、通常、デルタ関数で行われる。」
R「しかし、例えば”指数関数の係数を1にするように決めた”と主張して、物理を作り上げても何も問題はない。」
R「この例は任意性があるので、褒められない規格化だがね。」

Q「規格化が連続状態と束縛状態で違ってもよい、ということですか。」
Q「しかし、それでは連続状態と束縛状態で規格化した関数が、その境界で不連続になってしまうかもしれませんが、問題ないのですか。」

R「問題ない。連続状態と束縛状態を別々に規格化すると約束するならば、不連続でも問題ない。」
R「一方で、束縛状態でも連続状態でも統一的な規格化の方法を採用すれば、不連続性は起こらず、すっきりする。」
R「そのような規格化方法として、例えば波動関数を単なる2乗で規格化する方法がある。」
R「この場合は波動関数を複素平面に解析接続しなければならなくなるが。」


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