球体の空気抵抗と係数

まとめ


半径\(R\)の完全な球体に働く空気抵抗力\(F_d\)は
\(
\displaystyle F_d = 6\pi R \eta v + \frac{1}{2} C_d \rho \pi R^2 v^2
\)

です。方向も含めるのであれば
\(
\displaystyle \vec{F}_d = -6\pi R \eta |\vec{v}| \frac{\vec{v}}{|\vec{v}|} – \frac{1}{2} C_d \rho \pi R^2 |\vec{v}|^2 \frac{\vec{v}}{|\vec{v}|}
\)

となります。

ここで、

  • \(\eta\ \mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]}\) : 空気の粘性率(Viscosity) ※動粘度ではないです。
  • \(\rho\ \mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\) : 空気の密度
  • \(v\ \mathrm{[m\cdot s^{-1}]}\) : 球体の速度の大きさ
  • \(R\ \mathrm{[m]}\) : 球の半径

を表します。
\(C_d\)は抗力係数(Drag Coefficient)と呼ばれ、厳密にはレイノルズ数\(R_e\)の関数\(C_d=C_d(R_e)\)となります。
レイノルズ数\(R_e\)とは無次元量で、
\(\displaystyle R_e=\frac{v \rho L}{\eta}\)
という量です。ここで\(L\)は、物体の大きさを表し、半径\(R\)の球の場合は直径\(L=2R\)に相当する量です。

球の場合の抗力係数\(C_d(R_e)\)をフィッティングしたものは、論文[2]より、
\(
\displaystyle \small C_d=\frac{24}{R_e}+\frac{2.6\left(\frac{R_e}{5.0}\right)}{1+\left(\frac{R_e}{5.0}\right)^{1.52}}
+ \frac{0.411\left(\frac{R_e}{263000}\right)^{-7.94}}{1+\left(\frac{R_e}{263000}\right)^{-8.00}} + \left(\frac{R_e^{0.80}}{461000}\right)
\)

と表されます。
Cdグラフ

20℃で1気圧(101325[Pa])、湿度0%の空気中では、
\(
\begin{align}
\eta &= 18.2\times 10^{-6}\mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]} \\
\rho &= 1.205\mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}
\end{align}
\)

という値になります。

温度、圧力、湿度を考慮する場合

温度\(T[\mathrm{K}]\)、圧力\(P[\mathrm{Pa}]\)の時,
空気の粘性率\(\eta\mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]}\)は、
\(\displaystyle \eta\mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]}=1.487 \times 10^{-6}\cdot \left(\frac{T\mathrm{[K]}^{1.5}}{T\mathrm{[K]}+117}\right)\)
であり、
空気の密度\(\rho\ \mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\)は、
\(\displaystyle \rho\ \mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}=0.0034856447\cdot \frac{P\mathrm{[Pa]}}{T\mathrm{[K]}-0.670}\)
です。

この2つの式を[1]が正しいと思って確かめた温度の範囲-10℃~40℃で大体3桁くらい一致します。
この式は下に説明してある空気の場合を代入し、求めたものです。

2016/03/13 追)
湿度がある場合、空気の密度\(\rho_{w}\mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\)は湿度0%の時と比べて減少します。
温度\(t\mathrm{[{}^{\circ}C]}\)、湿度M(湿度60%の時、\(M=0.60\))、気圧\(P\mathrm{[Pa]}\)の場合、空気の密度\(\rho_{w}\mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\)は
\(
\displaystyle \rho_{w}\mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}=
\left(0.0034856447\cdot\frac{P\mathrm{[Pa]}}{t\mathrm{[{}^{\circ}C]}+272.48}\right)\cdot
\left(1-M\cdot 0.378\cdot\frac{100\cdot 6.1078\times 10^{\frac{7.5\cdot t\mathrm{[{}^{\circ}C]}}{t\mathrm{[{}^{\circ}C]}+237.3}}}{P\mathrm{[Pa]}}\right)
\)

と記述されます。
ここで用いた関係式は
[5]に圧力pの水蒸気を含んだ空気の密度の関係式

[6]、[7]の飽和水蒸気圧を求めるTetensの式
を用いています。また、atmによる単位系では[8]に記述があります。


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風の抵抗力の詳細


これと同じことは弾道計算(BB弾)の理論に記述してあります。
その中の風の抵抗力を部分を抜き出したものになります。

風(流体)の抵抗力の大きさ\(F_d\)は一般には次元解析により
\(
\displaystyle F_d=\frac{\eta^2}{\rho}\sum_{n=1}^{\infty}K_n \left(\frac{v \rho L}{\eta}\right)^n
\)

として与えられます[3]。ここで

  • \(\eta\ \mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]}\) : 流体の粘性率(Viscosity) ※動粘度ではないです。
  • \(\rho\ \mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\) : 流体の密度
  • \(v\ \mathrm{[m\cdot s^{-1}]}\) : 物体の速度の大きさ
  • \(L\ \mathrm{[m]}\) : 物体の大きさ(半径\(R\)の球の場合、\(L\)は直径\(L=2R\)に相当する量)
  • \(\frac{v \rho L}{\eta}\) : レイノルズ数(\(R_e\),Reynolds number)と呼ばれる無次元量

です。次元解析から具体的な定数の値\(K_n\)を求めることはできません。

速度の3乗以上に比例する項というのは見かけません。
おそらく、物体の動きを記述するために必要なパラメータがこの2つを考慮すれば含まれるため、\(n=3\)以上の項は冗長になるからでしょう。つまり、第一項には空気の密度\(\rho\)が含まれておらず、第二項まで入れることで\(\eta,\rho\)があらわに含まれるようになるからだと思います。

\(n=3\)以上の高次の効果は、抗力係数\(C_d\)に押し込めていると思います。

上の式の\(n=1,n=2\)をそのまま書き下すと
\(F_d=K_1\eta L v +K_2\rho L^2 v^2\)
となりますが、慣例として同じ次元を持つように式を変形させて
\(F_d=C_1 L\eta v +C_d S \left(\frac{1}{2}\rho v^2\right)\)
の形で記述されます。ここでSは速度に垂直な、物体の断面積です。

\(C_1\)は物体が完全な球で、小さく、その速度がゆっくりである場合(レイノルズ数が2以下くらい)、流体の運動を記述する方程式、
ストークス方程式(Stokes’ law、ナビエ・ストークス方程式のレイノルズ数が小さい極限の方程式)
から導くことができて\(C_1=3\pi\)であることが理論的に導けます。

\(C_d\)は抗力係数(Drag Coefficient)と呼ばれ、
これはレイノルズ数の関数となり、
\(C_d=C_d(R_e)\)
となります。
この抗力係数は非常に厄介らしいです。物体の形状に依存したりするらしく、球の場合でも、どうやら実験的に求められているようです。
Wikipediaの抗力係数のページに若干の記述があります。
球の場合の抗力係数の関数\(C_d(R_e)\)をフィッティングした関数は論文[2]より、
\(
\displaystyle \small C_d=\frac{24}{R_e}+\frac{2.6\left(\frac{R_e}{5.0}\right)}{1+\left(\frac{R_e}{5.0}\right)^{1.52}}
+ \frac{0.411\left(\frac{R_e}{263000}\right)^{-7.94}}{1+\left(\frac{R_e}{263000}\right)^{-8.00}} + \left(\frac{R_e^{0.80}}{461000}\right)
\)

として書けるそうです。実際にプロットしてみるとこんな感じです。
Cdグラフ
確かに抗力係数のグラフと同じようになります。

よって半径Rの球の場合、風の抵抗力\(F_d\)の大きさは結局、
\(
\begin{align}
F_d &= C_1 L\eta v +C_d S \left(\frac{1}{2}\rho v^2\right) \\
&= 3\pi \cdot 2R\cdot \eta v +\frac{1}{2} C_d \rho \pi R^2 v^2 \\
&= 6\pi R \eta v + \frac{1}{2} C_d \rho \pi R^2 v^2
\end{align}
\)
として与えられます。

各定数の値
名称 捕捉
空気の粘性率(Viscosity)\(\eta\) \(\small 18.2\times 10^{-6} \\ \small \mathrm{[kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-1}]}\) 空気中20度において。また、粘性率は数十気圧から数気圧の間圧力には依存しません。
が、温度に依存し、ある温度\(T_1[K]\)での粘性率\(\eta_1\)が分かっているならば、
温度\(T_2[K]\)での粘性率\(\eta_2\)はサザランドの定数Cを用いて、
\(
\eta_2=\eta_1 \left(\frac{T_1[K]+C}{T_2[K]+C}\right)\left(\frac{T_2[K]}{T_1[K]}\right)^{3/2}
\)
と記述されます。空気の場合、C=117です[4]。
乾燥した空気の密度\(\rho\) \(\small 1.205\mathrm{[kg \cdot m^{-3}]}\) 乾燥した空気の密度は温度と圧力に依存します。温度\(t[℃]\)、圧力をH[torr]とすると
\(
\rho=\frac{1.293}{1+0.00367t[℃]}\cdot \frac{H[torr]}{760}
\)
です[5]。

参考文献


[1]水・空気の物性 密度 粘度 動粘度
[2]Faith A. Morrison, “Data Correlation for Drag Coefficient for Sphere,” Department of Chemical Engineering, Michigan Technological University, Houghton, MI
[3]伊東敏雄著『な~るほど!の力学』学術図書出版社 (1994) p.220
[4]国立天文台編『理科年表 平成21年 第82冊』丸善株式会社 (2009) p.378
[5]国立天文台編『理科年表 平成21年 第82冊』丸善株式会社 (2009) p.376
[6]相対湿度の月別平年値 -理科年表オフィシャルサイト
[7]飽和水蒸気量 -wikipedia
[8] 空気 -wikipedia

ちなみに、
\(1 [\mathrm{torr}] = 133.322368 [\mathrm{Pa}]\\ 1[\mathrm{Pa}]=1[\mathrm{N\cdot m^{-2}}]=1[\mathrm{kg \cdot m^{-1}\cdot s^{-2}}]\)
という関係です。


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