量子力学における時間発展演算子\(\displaystyle \hat{U}_{(t)}=e^{-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t}\)の導出です。
これは、ハミルトニアンは時間依存しない場合に限ります。時間依存するときは時間順序積という概念が出てきます。
シュレディンガー方程式
\(
\begin{align}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi_{(x,t)}=\hat{H}\psi_{(x,t)}
\end{align}
\)
は既知のものとして進めます。
形式的な導出でよく説明されるのは以下の手順です。
すなわち、
\(
\begin{align}
\int_{\psi_{(0)}}^{\psi_{(t)}}\frac{d\psi}{\psi}&=\int_0^t\frac{\hat{H}}{i\hbar}dt^{\prime} \\
\ln\frac{\psi_{(t)}}{\psi_{(0)}}&=\frac{-i}{\hbar}\hat{H}t \\
\end{align}
\)
なので
\(
\displaystyle \psi_{(x,t)}=e^{-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t}\psi_{(x,0)}
\)
証明終了,,
(;’;゚;ж;゚;`;)ブホォッ
(; ^ω^)は…
何で波動関数で割ってくれちゃってるんですか?ハミルトニアンは演算子ですよ。形式的にしてもひどくない?
ということで、ちゃんと求めましょう。結果は↑のものと同じになります。不思議ですね。
ハミルトニアンが時間依存しないという条件の下求めます。
まず、時間依存するシュレディンガー方程式より、
\(
\displaystyle i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi_{(x,t)}=\hat{H}\psi_{(x,t)}
\)
となります。無限小時間\(\Delta t\)に対して、シュレディンガー方程式は、
\(
\displaystyle i\hbar\lim_{\Delta t\rightarrow 0}\frac{\psi_{(x,t+\Delta t)}-\psi_{(x,t)}}{\Delta t}=\hat{H}\psi_{(x,t)}
\)
です。以降\(\lim\)は省略します。
式を変形して、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+\Delta t)}=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)\psi_{(x,t)}
\)
また、もう\(\Delta t\)だけ時間を進めると、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+2\Delta t)}=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)^2\psi_{(x,t)}
\)
という結果が得られます。
ここで、\(\Delta t\)をN回作用させることを考えます。
すなわち、\(t^{\prime}=N\Delta t\)とおき、\(\Delta t=\frac{t^{\prime}}{N}\)として考えれば、任意の時間\(t^{\prime}\)に対して、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+t^{\prime})}=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t^{\prime}\frac{1}{N}\right)^N\psi_{(x,t)}
\)
という式が成立します。
無限回、微小区間\(\Delta t\)を動かす操作を考えればいいので、\(N\rightarrow \infty\)として考えれば、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+t^{\prime})}=\lim_{N\rightarrow \infty}\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t^{\prime}\frac{1}{N}\right)^N\psi_{(x,t)}
\)
公式
\(
\displaystyle \lim_{x\rightarrow \pm\infty}\left(1+\frac{a}{x}\right)^x=e^a
\)
より、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+t^{\prime})}=e^{-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t^{\prime}}\psi_{(x,t)}
\)
\(t=0\)と置き、\(t^{\prime}=t\)と文字を置き換えれば、
\(
\displaystyle \psi_{(x,t)}=e^{-i\frac{\hat{H}}{\hbar}t}\psi_{(x,0)}
\)
となり、ちゃんと時間発展演算子が導けました。めでたしめでたし。
ハミルトニアンが時間依存する場合、
\(
\displaystyle i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi_{(x,t)}=\hat{H}_{(t)}\psi_{(x,t)}
\)
となります。無限小時間\(\Delta t\)に対して、シュレディンガー方程式は、
\(
\displaystyle i\hbar\lim_{\Delta t\rightarrow 0}\frac{\psi_{(x,t+\Delta t)}-\psi_{(x,t)}}{\Delta t}=\hat{H}_{(t)}\psi_{(x,t)}
\)
次の時刻では
\(
\displaystyle \psi_{(x,t+2\Delta t)}=
\left(1-i\frac{\hat{H}_{(t+\Delta t)}}{\hbar}\Delta t\right)\left(1-i\frac{\hat{H}_{(t)}}{\hbar}\Delta t\right)\psi_{(x,t)}
\)
となります。2乗にはなってくれません。
と、どんどん作用させていくわけです。時間依存しない時と明らかに違ったものになりますが、詳しくは次の機会のお話で。
また、もうΔtだけ時間を進めると、・・・の後はどういう論理でしょうか。
何故1回だけの作用ではなく、何回も作用させようとしているのか、という事でしょうか?
演算子が含まれるので、微分方程式を経由しないで時間発展演算子を導きたい、という意図がありました。
微分を差分で記述するためにはΔt→0の極限でなければなりません。
なので有限の時間経過を記述するためには、この操作を無限回行ってΔt→0の極限を打ち消さなければなりません。そのために複数回作用させることを念頭に置いています。
ありがとございました
Δtを増やすのは分子のψ(x,t+Δt)-ψ(x,t)のところと右辺H^ψ(x,t)のところだったんですね
つまり
ih limΔt→0ψ(x,t+2Δt)-ψ(x,t+Δt)/Δt=H^ψ(x,t+Δt)とする。
左辺の分母も2Δtとしていたため計算間違いしていました。
ψ(x,t+Δt)から、もうΔtを増やしてψ(x,t+2Δt)とすれば、右辺が何故(1-i(H^)Δt/h)^2・ψ(x,t)となるのでしょうか?
もしよろしければ、(1-i(H^)Δt/h)の部分が自乗される式変形の導出を教えて下さい。
文字変換の都合上(H^)←エイチハットです
\begin{align}
\displaystyle \psi_{(x,t+2\Delta t)}&=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)\psi_{(x,t+\Delta t)}\\
&=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)\psi_{(x,t)}\\
&=\left(1-i\frac{\hat{H}}{\hbar}\Delta t\right)^2\psi_{(x,t)}
\end{align}
ということです。