– 1 = 1 ?

が発端です。間違いであることは直観で分かります。
問題はどこに間違いがあるか?です。

改めて問題を書けば、
\(
\begin{align}
-1&=i\times i \\
&=\sqrt{(-1)}\times\sqrt{(-1)} \\
&=\sqrt{(-1)\times(-1)} \\
&=\sqrt{1} \\
&=1
\end{align}
\)
です。

結論を先に言えば、2行目から3行目にかけての変形がダメです。
定義域の考慮が抜けています。
なぜダメなんでしょうか。詳しく見ていきましょう。

間違いが生じるのはなぜ?


\(i\)を極座標形式で考えます。
すると、
\(
\displaystyle i=0+i=e^{i\frac{\pi}{2}}
\)

ですよね。これは正しいです。
そして次に2行目から3行目を極形式でゆっくりと書いていけば、
\(
\begin{align}
-1&=i\times i \\
&=e^{i\frac{\pi}{2}}\times e^{i\frac{\pi}{2}} \\
&=\left(e^{i\pi}\right)^{1/2} \times\left(e^{i\pi}\right)^{1/2} \cdots \mbox{2行目に対応} \\
&=\left(e^{i2\pi}\right)^{1/2}\cdots \mbox{3行目に対応}
\end{align}
\)
です。

もしも、\(e^{i\theta}\)の\(\theta\)の範囲を勝手に\(0 \le \theta \lt 2\pi\)にしていたら。
この場合、角度\(2\pi\)はこの定義域内に含まれていません。
\(e^{i\theta}\)は\(2\pi\)の周期性を持つはずだ、だから
\(
e^{i2\pi}=e^{i0}=1
\)

であるはずだ、と思ってしまうんです。
これを行ってしまうと、最後の式は、
\(
\begin{align}
\left(e^{i2\pi}\right)^{1/2}&=\left(e^{i0}\right)^{1/2} \\
&=1^{1/2} \\
&=1
\end{align}
\)

となります。

よって間違った答え\(-1=1\)が生まれます。

間違いを起こさないためには


この問題を解決するためには定義域をきちっと示してあげればいいのです。
別の複素数を掛ける場合、通常、\(\theta\)の定義域も考慮しなければなりません。
故に、厳密に書けば、
\(
\displaystyle i=e^{i\frac{\pi}{2}}\ \ \ (0\le\theta \lt 2\pi)
\)

であり、
\(
\begin{align}
-1&=i\times i \\
&=e^{i\frac{\pi}{2}}\times e^{i\frac{\pi}{2}}\ \ \ \ (0\le\theta \lt 4\pi)\\
&=\left(e^{i2\pi}\right)^{1/2}\ \ \ (0\le\theta \lt 4\pi)
\end{align}
\)
なのです。\(e^{i\theta}\)は本来, 周期関数であって多価関数であることを忘れてはいけません。
故に、定義域内に収まっていないからと言って\(2\pi\)を加える必要はないのです。
だから、形はそのままであり、計算は
\(
\begin{align}
&\left(e^{i2\pi}\right)^{1/2}\ \ \ (0\le \theta\lt 4\pi)\\
&=e^{i\pi}\ \ \ (0\le \theta\lt 2\pi)\\
&=-1
\end{align}
\)
だから、やはり\(-1=-1\)なのです。

※上の式\(-1=i\times i\cdots\)は長いので、
\(
\sqrt{(-1)^2}
\)

の値は何ですか?という問いかけでもいいと思います。
この場合、この答えは\(\pm 1\)です。どちらでも正解です。
なぜならば、\(X=\sqrt{(-1)^2}\)とおいて、
\(
\begin{align}
X&=\sqrt{(-1)^2} \\
X^2&=1 \\
&(X+1)(X-1)=0 \\
\end{align}
\)
だからです。


この問題が顕著に表れるのは数値計算です。コンピュータは定義域の考慮はできません。人為的に入れるしか手段は無く、必ず\(2\pi\)の範囲に収まっていなければならないのです。なので、数値計算で複素数を扱う場合、この問題が発生していないか確かめましょう。符号が知らない間に変わっている、軽視いているととんでもない問題になります。


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