時間依存しない摂動論(縮退無し)

時間依存しない摂動論(縮退無し) #

本内容は、主にB. H. BransdenとC. J. Joachainによる著書 Physics of Atoms and Molecules (2nd Edition) の第2章8項 “Approximation method” に基づきます1

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Physics of Atoms and Molecules
B. H. Bransden and C. J. Joachain, Benjamin Cummings

1. まとめ #

時間依存しないシュレーディンガー方程式 (TISE)

$$ \begin{align} (\hat{H}_0+\hat{H}’)\varphi = E \varphi \end{align} $$

を解いて、$k$番目の固有エネルギー$E_k$と固有関数$\varphi_k$を求めることを考えます。 $\hat{H}_0$に対する$\hat{H}’$の影響度合いをオーダー$\lambda\ll 1$で表現し、$\hat{H}_0=O(\lambda^0)$, $\hat{H}’=O(\lambda^1)$を持つと考えます。

TISE\eqref{e20}の解$E_k, \varphi_k$を$\lambda$の級数で展開します。

$$ \begin{align} \varphi_k &= \varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} + \varphi_k^{(2)} + \cdots \\ E_k &= E_k^{(0)} + E_k^{(1)} + E_k^{(2)} + \cdots \end{align} $$

ここで、$E^{(0)}, \varphi^{(0)}$は$\hat{H}_0\varphi^{(0)} = E^{(0)} \varphi^{(0)}$の解 , また $E_k^{(s)}=O(\lambda^s), \varphi_k^{(s)}=O(\lambda^s)$のオーダーを持つとしています。すると解は下記のように求められます。

$$ \begin{align} \varphi_k^{(s)}&=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(s)}\varphi_m^{(0)} \\ E_k^{(s)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle = \sum_{m\ne k} H’_{km}a_{mk}^{(s-1)} \end{align} $$

ここで、下記のように変数を置きました。

$$ \begin{align} a_{mk}^{(s)} =\frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}a_{mk}^{(j)} - \sum_{n} H’_{mn} a_{nk}^{(s-1)} \biggr],~~(s\geq 1, m\ne k) \end{align} $$

$$ \begin{align} H’_{lm} = \langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_m^{(0)}\rangle \end{align} $$

具体的な問題に対して、摂動論による解を適当な次数で打ち切ると波動関数は下記のように変化していきます。

2. 問題設定 #

系が時間依存しないハミルトニアン

$$ \begin{align} \label{e1} \hat{H}=\hat{H}_0+\hat{H}’ \end{align} $$

で記述される場合の 時間依存しないシュレーディンガー方程式(Time-independent Shrödinger equation, TISE) を解いて、系の固有エネルギー$E=E_k$と$E_k$に属する固有関数$\varphi=\varphi_k$を求めることを考えます。

つまり、本稿で解くことを目標とするTISEは、

$$ \begin{align} \label{e2} \hat{H}\varphi = E \varphi \end{align} $$

です。

系のハミルトニアン\eqref{e1}は、2つのハミルトニアンの和で書かれており、それぞれの項を下記のように名前を付けて区別します。

  • $\hat{H}_0$: 非摂動ハミルトニアンで、$\lambda^0$のオーダー
  • $\hat{H}’$: 摂動ハミルトニアンで、$\lambda^1$のオーダー

$\hat{H}_0$と$\hat{H}’$の違いは、**系のハミルトニアン$\hat{H}$に対する影響度合いの強さ$\lambda$**だけ異なります。

$\lambda$は微小量$\lambda\ll 1$であり、$\hat{H}_0$に対する$\hat{H}’$の比のような量を示しています。 厳密に$\lambda=0$の時、$\hat{H}=\hat{H}_0$に一致し、$\lambda$に比例するオーダーを持つ摂動ハミルトニアン$\hat{H}’$は0になります。

また、非摂動ハミルトニアン$\hat{H}_0$に対するTISEは既に解けているとします。つまり、

$$ \begin{align} \label{e3} \hat{H}_0 \varphi_k^{(0)} = E_k^{(0)} \varphi_k^{(0)} \end{align} $$

は解けており、この固有エネルギー$E_k^{(0)}$とそれに属する固有関数$\varphi_k^{(0)}$は既知であるとします。 また、$\hat{H}_0$はエルミート演算子と仮定します(つまり固有エネルギーは実数となります)。

ここで$\varphi_k^{(0)}$は、正規直交化されており、

$$ \begin{align} \label{e4} \langle\varphi_n^{(0)}|\varphi_m^{(0)}\rangle &= \delta_{n,m},&&(\text{For discrete state}) \\ &= \delta(n-m),&&(\text{For continuum state}) \end{align} $$

を満たします。ここで、$\hat{H}_0$の離散状態は$\delta_{i,j}$(クロネッカーのデルタ)、連続状態は$\delta(x)$(ディラックのデルタ関数)で正規直交化されていることを示します。

以降、離散状態であっても連続状態であっても直交性は$\delta_{i,j}$とだけ表記しますが、この表記法の中には連続の場合の表現も含んでいるとします。

以上の問題・条件の下、TISE\eqref{e2}を解いていきます。 縮退がある場合と無い場合で大きく解き方が変わりますが、本稿では縮退の無い場合のみを考えます。

2.1. 解法 #

改めて解きたい問題は下記になります。

$$ \begin{align} \label{e5} \left(\hat{H}_0+\hat{H}’\right)\varphi = E \varphi \end{align} $$

$\lambda\to 0$の極限を考えるので、TISE\eqref{e5}の$k$番目の固有状態$\varphi_k$は、$\varphi_k^{(0)}$から大きく歪められないだろう、と考えて理論を組み立てます。逆に言えば、$\varphi_k^{(0)}$を大きく歪めてしまう問題に対して摂動論を適用してはいけない、ということです2

TISE\eqref{e5}の$\lambda\to 0$の近傍では、$\lambda$の級数を持つ項で展開できると考えて

$$ \begin{align} E_k &= E_k^{(0)} + E_k^{(1)} + E_k^{(2)} + \cdots \label{e6}\\ \varphi_k &= \varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} + \varphi_k^{(2)} + \cdots \label{e7} \end{align} $$

と展開します。ここで、$E_k^{(s)}, \varphi_k^{(s)}$は$\lambda^s$に比例するオーダーを持つ項です。摂動論では$\lambda\ll 1$を考えるので、それらの項の影響は$s$が大きくなるに従って徐々に小さくなっていくことを$\lambda^s$で示しています。

TISE\eqref{e5}の$k$番目の固有エネルギー$E=E_k$、固有関数$\varphi=\varphi_k$に対して$\lambda$による展開\eqref{e6},\eqref{e7}を代入すれば

$$ \begin{align} \label{e8} \left(\hat{H}_0+\hat{H}’\right)\left(\varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} +\cdots\right) = \left(E_k^{(0)} + E_k^{(1)} + \cdots\right) \left(\varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} +\cdots\right) \end{align} $$

となります。$O(\lambda^s)O(\lambda^r)=O(\lambda^{s+r})$に注意して、左辺・右辺で$\lambda$の同じオーダーを持つ項で恒等式を作れば

$$ \begin{align} \lambda^{0}&: &&\hat{H}_0\varphi_k^{(0)} = E_k^{(0)}\varphi_k^{(0)} \label{e9_0} \\ \lambda^{1}&: &&\hat{H}_0\varphi_k^{(1)}+\hat{H}’\varphi_k^{(0)} = E_k^{(0)}\varphi_k^{(1)} + E_k^{(1)}\varphi_k^{(0)} \label{e9_1} \\ \lambda^{2}&: &&\hat{H}_0\varphi_k^{(2)}+\hat{H}’\varphi_k^{(1)} = E_k^{(0)}\varphi_k^{(2)} + E_k^{(1)}\varphi_k^{(1)} + E_k^{(2)}\varphi_k^{(0)} \label{e9_2} \\ & &&\vdots \nonumber \\ \lambda^{s}&: &&\hat{H}_0\varphi_k^{(s)}+\hat{H}’\varphi_k^{(s-1)} = \sum_{j=0}^s E_k^{(s-j)}\varphi_k^{(j)} \label{e9_s}\\ & &&\vdots \nonumber \end{align} $$

となります。

一般的に考えるために、式\eqref{e9_s}を考えます。式\eqref{e9_s}の両辺に左から$\psi_l^{(0)*}$を掛けて全空間で積分して式変形すると

$$ \begin{gather} \langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}_0|\varphi_k^{(s)}\rangle +\langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle =\sum_{j=0}^s E_k^{(s-j)}\langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(j)}\rangle \label{e10} \end{gather} $$

より

$$ \begin{align} &\left(E_l^{(0)}-E_k^{(0)}\right)\langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(s)}\rangle -E_k^{(s)}\delta_{l,k} \nonumber\\ &\hspace{10em}=-\langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle +\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}\langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(j)}\rangle \label{e11} \end{align} $$

を得ます。$l=k$の時、式\eqref{e11}の左辺第一項が消えてしまうため、 $l=k$と$l\ne k$の時で場合分けをして計算を進めていきます。

2.1.1. 固有エネルギーの補正 #

式\eqref{e11}で$l=k$の時を考えます。 この時、式に含まれる変数の中で、$E_k^{(s)}$だけが最も高い次数$s$であり、そのほかの変数は$s$より小さいオーダーの補正量で構成されています。 つまり、$s=1$から順に逐次的に解いていけば、任意の$s$に対する$E_k^{(s)}$を求めることができます。

具体的に$l=k$を代入して$E_k^{(s)}$について解けば

$$ \begin{align} E_k^{(s)}=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle -\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}\langle\varphi_k^{(0)}|\varphi_k^{(j)}\rangle \label{e12} \end{align} $$

を得ます。

結果を先取りしますが、式\eqref{e13a}を満たすように波動関数を選ぶと\eqref{e12}の第二項は消え、

$$ \begin{align} E_k^{(s)}=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle \label{e12a} \end{align} $$

と書くことができます。

2.1.2. 固有関数の補正係数 #

式\eqref{e11}で$l\ne k$の時を考えます。

この時、$\varphi_k^{(s)}$だけが最も高い次数$s$であり、そのほかの変数は$s$より小さいオーダーの補正量で構成されています。 固有エネルギーの時と同様に、$s=1$から順に逐次的に解けば求められます。

式変形すると

$$ \begin{align} \langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(s)}\rangle =\frac{1}{E_l^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[-\langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle +\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}\langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(j)}\rangle\biggr] \label{e13} \end{align} $$

となります。もう少し明確な結果にするために、$\varphi_k^{(s)}$を展開します。

$\varphi_k^{(0)}$は正規直交基底だと仮定しているので、これで$\varphi_k^{(s)}$を展開することを考えます。つまり

$$ \begin{align} \label{e13a} \varphi_k^{(s)}=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(s)}\varphi_m^{(0)},~~(s\geq 1) \end{align} $$

と展開して、未知係数$a_{mk}^{(s)},\hspace{0.1em}(s\geq 1, m\ne k)$を求める問題とします。 展開\eqref{e13a}に$m=k$を含めておりませんがこれは良いです。理由は後述します。
また、状態$k$について考えているとき、$a_{mk}^{(0)}=\delta_{mk}$ となります。

オーダーを確認しておきますが、$\varphi_m^{(0)}$は$O(\lambda^0)$, $\varphi_k^{(s)}$は$O(\lambda^s)$なので、$a_{mk}^{(s)}$は$O(\lambda^s)$を持ちます。

式\eqref{e13a}を式\eqref{e13}に代入すると、$a_{lk}^{(s)}=\langle\varphi_l^{(0)}|\varphi_k^{(s)}\rangle$より

$$ \begin{align} a_{lk}^{(s)} =\frac{1}{E_l^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}a_{lk}^{(j)} - \sum_{m\ne k} H’_{lm} a_{mk}^{(s-1)} \biggr],~~(s\geq 1, l\ne k) \label{e13d} \end{align} $$

を得ます。ここで、

$$ \begin{align} \label{e13e} H’_{lm}\equiv \langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_m^{(0)}\rangle \end{align} $$

と定義しました。改めて固有エネルギーを式\eqref{e13a}を用いて書き直せば

$$ \begin{align} E_k^{(s)} &= \langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle -\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}\langle\varphi_k^{(0)}|\varphi_k^{(j)}\rangle \label{e13f} \\ &= \sum_{m\ne k} H’_{km}a_{mk}^{(s-1)}\label{e13g} \end{align} $$

となります。式\eqref{e13g}へ変形する際に、式\eqref{e13f}の第二項を式\eqref{e13a}より消しました。

2.1.3. 摂動係数の展開に$l=k$の項を含めない理由 #

ここで、摂動項の展開\eqref{e13a}において$m=k$を含めなくて良い理由を述べておきます。 もし、仮にそれぞれの摂動項が基底関数$\{\varphi_m^{(0)}\}$で展開されていることを考える場合、下記のように変形することができます。

$$ \begin{align} \varphi_k & = \varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} + \cdots \nonumber\\ & = \varphi_k^{(0)} + \sum_{m} a_{mk}^{(1)}\varphi_m^{(0)} + \sum_{m} a_{mk}^{(2)}\varphi_m^{(0)} + \cdots \nonumber\\ %& = \sum_{m} \left[ \sum_{s=1} (\delta_{mk} + a_{mk}^{(s)}) \right]\varphi_m^{(0)} \\ & = \sum_{m} d_{mk}\varphi_m^{(0)} \nonumber\\ & = d_{kk}\left(\varphi_k^{(0)} + \sum_{m\ne k} c_{mk}\varphi_m^{(0)}\right) \label{e14b} \end{align} $$

ここで

$$ \begin{gather} d_{mk}\equiv \sum_{s=1} (\delta_{mk} + a_{mk}^{(s)}),~~~~c_{mk}\equiv\frac{d_{mk}}{d_{kk}} \end{gather} $$

と置きました。波動関数の複素定数倍も自動的にTISEの解になるので、式\eqref{e14b}の$d_{kk}$倍を無視して

$$ \begin{align} \label{e14c} \varphi_k = \varphi_k^{(0)} + \sum_{m\ne k} c_{mk}\varphi_m^{(0)} \end{align} $$

の形で解を探すことができます。そのため、摂動項$\varphi_k^{(s)},~~(s\leq 1)$における$\varphi_k^{(0)}$の成分はいつもゼロという形で見つけて良い、ということになります。

ただし、式\eqref{e14c}に従って見つけた$\varphi_k$の存在確率密度は$1$に規格化されていないため、必要に応じて必要なオーダーまで摂動項を計算した後に$1$に再び規格化する必要があります。

2.2. まとめ #

時間依存しないシュレーディンガー方程式 (TISE)

$$ \begin{align} \label{e20} (\hat{H}_0+\hat{H}’)\varphi = E \varphi \end{align} $$

を解いて、$k$番目の固有エネルギー$E_k$と固有関数$\varphi_k$を求めることを考えます。$\hat{H}_0$に比べて$\hat{H}’$の与える影響が小さい場合を考えます。 $\hat{H}_0$に対する$\hat{H}’$の影響度合いをオーダー$\lambda\ll 1$で表現します。オーダーとして考えると、$\hat{H}_0=O(\lambda^0)$, $\hat{H}’=O(\lambda^1)$を持つと考えます。

$\hat{H}_0$のTISE

$$ \begin{align} \label{e21} \hat{H}_0\varphi^{(0)} = E^{(0)} \varphi^{(0)} \end{align} $$

を満たす固有エネルギー$E_k^{(0)}$と固有関数$\varphi_k^{(0)}$が既知である時、TISE\eqref{e20}の解$E_k, \varphi_k$を$\lambda$の級数で展開します。

$$ \begin{align} \varphi_k &= \varphi_k^{(0)} + \varphi_k^{(1)} + \varphi_k^{(2)} + \cdots \label{e22}\\ E_k &= E_k^{(0)} + E_k^{(1)} + E_k^{(2)} + \cdots \label{e23} \end{align} $$

ここで、$E_k^{(s)}=O(\lambda^s), \varphi_k^{(s)}=O(\lambda^s)$のオーダーを持つと考えています。すると、解は下記のように求められます。

$$ \begin{align} \varphi_k^{(s)}&=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(s)}\varphi_m^{(0)} \label{e24}\\ E_k^{(s)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle = \sum_{m\ne k} H’_{km}a_{mk}^{(s-1)} \label{e25} \end{align} $$

ここで、

$$ \begin{align} \label{e27} a_{mk}^{(s)} =\frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}a_{mk}^{(j)} - \sum_{n} H’_{mn} a_{nk}^{(s-1)} \biggr],~~(s\geq 1, m\ne k) \end{align} $$

$$ \begin{align} \label{e28} H’_{lm} = \langle\varphi_l^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_m^{(0)}\rangle \end{align} $$

と置きました。具体的にいくつかの摂動項を書き下しますと、下記のようになります。

2.2.1. 1次摂動項 #

$$ \begin{align} E_k^{(1)}&= H’_{kk} \label{e30}\\ \varphi_k^{(1)}&=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(1)}\varphi_m^{(0)} \label{e31}\\ &a_{mk}^{(1)}=\frac{- H’_{mk}}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}},\hspace{1em}(m\ne k) \label{e32} \end{align} $$

ここで、$a_{kk}^{(1)}=0$です。

2.2.2. 2次摂動項 #

$$ \begin{align} E_k^{(2)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(1)}\rangle = \sum_{m\ne k} \frac{- |H’_{mk}|^2}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}} \label{e33}\\ \varphi_k^{(2)}&=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(2)}\varphi_m^{(0)} \label{e34} \end{align} $$

$$ \begin{align} a_{mk}^{(2)}&=\frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[E_k^{(1)}a_{mk}^{(1)} - \sum_{n\ne k} H’_{mn} a_{nk}^{(1)} \biggr] \label{e35}\\ &=\frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[E_k^{(1)}\frac{- H’_{mk}}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}} + \sum_{n\ne k} \frac{ H’_{mn}H’_{nk}}{E_n^{(0)}-E_k^{(0)}} \biggr],\hspace{1em}(m\ne k) \label{e36} \end{align} $$

ここで、$a_{kk}^{(1)}=a_{kk}^{(2)}=0, (\text{for all }k)$ です。

2.2.3. s次摂動項 #

$$ \begin{align} E_k^{(s)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(s-1)}\rangle = \sum_{m\ne k} H’_{km}a_{mk}^{(s-1)} \label{e37}\\ \varphi_k^{(s)}&=\sum_{m\ne k} a_{mk}^{(s)}\varphi_m^{(0)} \label{e38} \end{align} $$

$$ \begin{align} \label{e39} a_{mk}^{(s)} =\frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[\sum_{j=1}^{s-1} E_k^{(s-j)}a_{mk}^{(j)} - \sum_{n\ne k} H’_{mn} a_{nk}^{(s-1)} \biggr],~~(s\geq 1, m\ne k) \end{align} $$

ここで、$a_{kk}^{(s)}=0, (s\ge 1, \text{for all }k)$ です。

3. 具体例 #

3.1. 調和振動子+摂動 #

摂動論が実際に機能するか確かめるために、調和振動子に摂動を加え、具体的に確認してみます。

3.1.1. 解析解 #

$$ \begin{align} \label{e40} (\hat{H}_0+\hat{H}’)\varphi = E \varphi \end{align} $$

ここで、非摂動のハミルトニアンは

$$ \begin{align} \label{e41} \hat{H}_0=-\frac{1}{2}\frac{d^2}{dx^2}+\frac{1}{2}x^2 \end{align} $$

と書き、摂動ハミルトニアンは

$$ \begin{align} \hat{H}’&=-ax+\frac{1}{2}a^2+b \label{e42}\\ &\equiv Ax+B \label{e43} \end{align} $$

と書きます。ここで、$A=-a, B=\frac{1}{2}a^2+b$と置きました。 これらの文字$a,b,A,B$は計算に都合の良いように置いています。

摂動等を考えずに純粋に変形しますと、シュレーディンガー方程式は、

$$ \begin{gather} \label{e44} \left(-\frac{1}{2}\frac{d^2}{dx^2}+\frac{1}{2}(x-a)^2\right)\varphi(x) = (E-b) \varphi(x) \end{gather} $$

となります。つまり、$a$は固有関数を$a$だけ平行移動、$b$は固有エネルギーを$b$だけシフトさせるパラメータになります。 TISEの解は、摂動が加わっていない固有エネルギー$E^{(0)}$と固有関数$\varphi^{(0)}(x)$を用いて

$$ \begin{align} \varphi(x)&=\varphi^{(0)}(x-a) \label{e45} \\ E&=E^{(0)}+b \label{e46}\\ &=E^{(0)}+B-\frac{A^2}{2} \end{align} $$

と書けます。摂動論によって導かれた結果が式\eqref{e45},\eqref{e46}に一致するか、これから確かめていきます。

TISE$\hat{H}_0\varphi^{(0)}=E^{(0)}\varphi^{(0)}$ の固有エネルギー、固有状態を具体的に表すと下記のようになります。

$$ \begin{gather} E^{(0)}_n=n+\frac{1}{2}\\ \varphi^{(0)}_n(x)=\frac{\pi^{-1/4}}{\sqrt{2^n n!}}H_n(x)e^{-x^2/2} \end{gather} $$

と書けます。

3.1.2. 摂動論による結果 #

摂動論に従って実際に計算していきます。 1次摂動論による結果は、式\eqref{e30}, \eqref{e31}, \eqref{e32}により求められているので、これを計算します。

$H’_{lm}$を計算しますと下記のようになります。計算の詳細は付録の式\eqref{x61}に記載しました。

$$ \begin{align} H’_{lm} &= \langle\varphi_l^{(0)}|(Ax+B)|\varphi_m^{(0)}\rangle \nonumber\\ &= A\sqrt{\frac{m}{2}}\delta_{l,m-1} + B\delta_{l,m} + A\sqrt{\frac{m+1}{2}}\delta_{l,m+1} \label{e61} \end{align} $$

となります。また、$H’_{l,m}=H’_{m,l}$が成立します。

これらの結果から、摂動論による固有エネルギーと固有関数の補正は次のように与えられます。

  • 1次摂動

    • 固有エネルギーの補正項

      $$ \begin{align} E_k^{(1)}= H’_{kk} = B \label{e62} \end{align} $$

    • 固有関数の補正項

      $$ \begin{align} \varphi_k^{(1)}(x)&=\frac{A}{\sqrt{2}}\left[\sqrt{k}\varphi_{k-1}^{(0)}(x) - \sqrt{k+1} \varphi_{k+1}^{(0)}(x)\right] \label{e63} \\ &=-a \frac{d\varphi_k^{(0)}}{dx} \end{align} $$

      ※ $A=-a$ と $\varphi_{k}^{(0)}(x)$の漸化式 (付録\eqref{x80}) を使用。

    • 固有関数の補正項に関する係数

      $$ \begin{align} a_{mk}^{(1)} = A\sqrt{\frac{k}{2}}\delta_{m,k-1} - A\sqrt{\frac{k+1}{2}}\delta_{m,k+1} \label{e64} \end{align} $$

      ※ $a_{mk}^{(1)}$の式変形過程は付録の式\eqref{x64}を参照。

    • 1次摂動まで取り入れた波動関数

      以上より、1次摂動項までを含めた波動関数は下記のように書けます。

      $$ \begin{align} \varphi_k(x)&=\varphi_k^{(0)}(x)+\varphi_k^{(1)}(x) + O(\lambda^2)\\ &= \varphi_k^{(0)}(x) + \frac{A}{\sqrt{2}}\left[\sqrt{k}\varphi_{k-1}^{(0)}(x) - \sqrt{k+1} \varphi_{k+1}^{(0)}(x)\right] \\ &=\varphi_k^{(0)}(x)- a \frac{d\varphi_k^{(0)}}{dx} + O(\lambda^2) \label{e80} \\ \end{align} $$

      これは、解析解\eqref{e45}のテーラー展開

      $$ \begin{align} \varphi^{(0)}(x-a) &= \varphi^{(0)}(x) - a\frac{d\varphi^{(0)}}{dx} + a^2\frac{1}{2!}\frac{d^2\varphi^{(0)}}{dx^2} + O(\lambda^3) \end{align} $$

      の$O(\lambda^1)$の項まで考慮した結果に一致しています。

      もし、存在確率密度を $1$ にする場合は下記のようになります。

      $$ \begin{align} \small \varphi_k(x)=\frac{1}{\sqrt{1+\frac{A^2}{2}(2k+1)}}\left(\varphi_k^{(0)}(x) + \frac{A}{\sqrt{2}}\left[\sqrt{k}\varphi_{k-1}^{(0)}(x) - \sqrt{k+1} \varphi_{k+1}^{(0)}(x)\right]\right) + O(\lambda^2) \end{align} $$

  • 2次摂動

    • 固有エネルギーの補正項

      $$ \begin{align} E_k^{(2)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(1)}\rangle =\frac{A}{\sqrt{2}}\left[\sqrt{k}H’_{k,k-1} -\sqrt{k+1} H’_{k,k+1}\right] \nonumber \\ &=-\frac{A^2}{2} \label{e65} \end{align} $$

    • 固有関数の補正項

      $$ \begin{align} \label{e66} \varphi_k^{(2)}=\frac{A^2}{4}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\varphi_{k-2}(x) + \sqrt{(k+1)(k+2)}\varphi_{k+2}(x) \biggr] \end{align} $$

    • 固有関数の補正項に関する係数

      $$ \begin{align} \label{e67} a_{mk}^{(2)} = \frac{1}{2}\frac{A^2}{2}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\delta_{m,k-2} + \sqrt{(k+1)(k+2)}\delta_{m,k+2} \biggr] \end{align} $$

      ※ $a_{mk}^{(2)}$の式変形過程は付録の式\eqref{x67a}から\eqref{x67b}を参照。

    • 2次摂動まで取り入れた波動関数

      $$ \begin{align} \varphi_k(x)&=\varphi_k^{(0)}(x)+\varphi_k^{(1)}(x)+\varphi_k^{(2)}(x) + O(\lambda^3)\\ &=\left[1+\frac{a^2}{2}\left(k+\frac{1}{2}\right)\right]\varphi_k^{(0)} - a\frac{d\varphi_k^{(0)}}{dx} + \frac{a^2}{2}\frac{d^2\varphi_k^{(0)}}{dx^2} + O(\lambda^3) \\ &\approx \varphi_k^{(0)} - a\frac{d\varphi_k^{(0)}}{dx} + \frac{a^2}{2}\frac{d^2\varphi_k^{(0)}}{dx^2} + O(\lambda^3) \label{e90}\\ \end{align} $$

      式\eqref{e90}は、$\varphi_k^{(0)}(x-a)$のテーラー展開において、$O(\lambda^2)$の項まで考慮した結果に一致しています。

      ここで、式\eqref{e90}に登場する$\varphi_k^{(0)}$の係数について、第一項は$O(\lambda^0)$, 第二項は$O(\lambda^2)$なので第二項は無視できると考えています3

      もし、存在確率密度を $1$ にする場合は下記のようになります。

      $$ \begin{align} \varphi_k(x)&=\frac{1}{\sqrt{1+\frac{A^2}{2}(2k+1)+\frac{A^4}{8}(k^2+k+1)}} \nonumber\\ &\times \biggl(\varphi_k^{(0)}(x) + \frac{A}{\sqrt{2}}\left[\sqrt{k}\varphi_{k-1}^{(0)}(x) - \sqrt{k+1} \varphi_{k+1}^{(0)}(x)\right] \nonumber \\ &+ \frac{A^2}{4}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\varphi_{k-2}(x) + \sqrt{(k+1)(k+2)}\varphi_{k+2}(x)\biggr]\biggr) + O(\lambda^3) \end{align} $$

  • 3次摂動

    • 固有エネルギーの補正項

      $$ \begin{align} E_k^{(3)}&=\langle\varphi_k^{(0)}|\hat{H}’|\varphi_k^{(2)}\rangle = 0 \label{e68} \end{align} $$

      式\eqref{e61}より、$H’_{l,m}$は$l=m$または$l=m\pm 1$の時しか値を持ちませんが、2次摂動項\eqref{e66}の結果から$H’_{l,l\pm 2}$しか生じ得ないためゼロであることが分かります。

    • 固有関数の補正項

      $$ \begin{align} \varphi_k^{(3)}&=\frac{A^3}{12\sqrt{2}} \biggl[\sqrt{k(k-1)(k-2)}\varphi_{k-3}(x) + 3(k+1)\sqrt{k}\varphi_{k-1}(x) \nonumber\\ & \hspace{3em} - 3k\sqrt{k+1}\varphi_{k+1}(x) - \sqrt{(k+1)(k+2)(k+3)}\varphi_{k+3}(x)\biggr] \label{e68a} \end{align} $$

      ちなみに、厳密解をテーラー展開した3次の項は下記のようになります。

      $$ \begin{align} -\frac{a^3}{3!}\frac{d^3\varphi_k^{(3)}}{dx^3}&=\frac{A^3}{12\sqrt{2}} \biggl[\sqrt{k(k-1)(k-2)}\varphi_{k-3}(x) - 3k^{3/2}\varphi_{k-1}(x) \nonumber\\ &\hspace{1em} + 3(k+1)^{3/2}\varphi_{k+1}(x) - \sqrt{(k+1)(k+2)(k+3)}\varphi_{k+3}(x)\biggr] \label{e68b} \end{align} $$

      この結果\eqref{e68b}が\eqref{e68a}と一致すると期待しておりましたが,2次の時に一致しなかったように一致しないようです。もしくは計算ミスがどこかにあるかもしれませんが、見つけられておりません。

3.1.3. 図示 #

適当な摂動論の次数で打ち切った波動関数を図示すると次のようになります。

  • $a=0.5$の時
  • $a=1.0$の時
  • $a=2.0$の時

2次まで取り込んだ場合、摂動として大きさの小さい$a=0.5$は近似良く解析解に一致しますが、比較的大きい$a=2.0$の場合はあまり一致していないことが分かります。

4. 付録 #

4.1. 式\eqref{e61}の変形 #

$$ \begin{align} \langle\varphi_l^{(0)}|x|\varphi_m^{(0)}\rangle &=\frac{\pi^{-1/2}}{\sqrt{2^{l+m} l!m!}} \int_{-\infty}^{\infty} x H_l(x) H_m(x)e^{-x^2} dx \nonumber\\ &=\frac{\pi^{-1/2}}{\sqrt{2^{l+m} l!m!}} \left[\frac{1}{2}\sqrt{\pi}2^m m!\delta_{l+1,m}+l\sqrt{\pi}2^m m!\delta_{l-1,m}\right] \nonumber\\ &=\sqrt{2^{m-l}}\sqrt{\frac{m!}{l!}}\left(\frac{1}{2}\delta_{l+1,m}+l\delta_{l-1,m}\right) \nonumber\\ &=\sqrt{\frac{m}{2}}\delta_{l,m-1}+\sqrt{\frac{m+1}{2}}\delta_{l,m+1} \label{x61} \end{align} $$

であり、かつエルミート多項式の三項漸化式4

$$ \begin{gather} x H_n(x) = \frac{1}{2}H_{n+1}(x) + n H_{n-1}(x),\hspace{1em}(n\geq 0)\label{x62} \\ H_{-1}(x) = 0 \end{gather} $$

とエルミート多項式の直交性5

$$ \begin{gather} \int H_m(x)H_n(x)e^{-x^2} = \sqrt{\pi}2^n n! \delta_{m,n} \end{gather} $$

を用いました。

4.2. 式\eqref{e64}の変形 #

$$ \begin{align} a_{mk}^{(1)} &= \frac{- H’_{mk}}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}, \hspace{1em} (m\ne k) \nonumber\\ &= \frac{-1}{m-k}\left[A\sqrt{\frac{m}{2}}\delta_{m-1,k} + B\delta_{m,k} + A\sqrt{\frac{m+1}{2}}\delta_{m+1,k}\right] \nonumber\\ &= A\sqrt{\frac{k}{2}}\delta_{m,k-1} - A\sqrt{\frac{k+1}{2}}\delta_{m,k+1} \label{x64} \end{align} $$

4.3. 式\eqref{e80}の変形 #

直交多項式$\varphi_k^{(0)}$に対する漸化式

$$ \begin{align} \label{x80} \frac{d\varphi_k^{(0)}}{dx} = \sqrt{\frac{k}{2}}\varphi_{k-1}^{(0)}(x) - \sqrt{\frac{k+1}{2}}\varphi_{k+1}^{(0)}(x) \end{align} $$

が成立します。

4.4. 式\eqref{e67}の変形 #

$a_{mk}^{(2)}$を計算するために、その計算に必要な次の和を計算します。

$$ \begin{align} \sum_{n\ne k} H’_{mn} a_{nk}^{(1)} &= \sum_{n\ne k}H’_{m,n}\left(A\sqrt{\frac{k}{2}}\delta_{n,k-1}-A\sqrt{\frac{k+1}{2}}\delta_{n,k+1}\right) \nonumber\\ &=H’_{m,k-1}A\sqrt{\frac{k}{2}}-H’_{m,k+1}A\frac{k+1}{2} \nonumber\\ &=\frac{A^2}{2}\sqrt{k(k-1)}\delta_{m,k-2} + AB\sqrt{\frac{k}{2}}\delta_{m,k-1} - \frac{A^2}{2}\delta_{m,k} \nonumber\\ &\hspace{5em} - AB\sqrt{\frac{k+1}{2}}\delta_{m,k+1} - \frac{A^2}{2}\sqrt{(k+1)(k+2)}\delta_{m,k+2} \label{x67a} \end{align} $$

すると、

$$ \begin{align} a_{mk}^{(2)} &= \frac{1}{E_m^{(0)}-E_k^{(0)}}\biggl[E_k^{(1)}a_{mk}^{(1)} - \sum_{n\ne k} H’_{mn} a_{nk}^{(1)} \biggr] \nonumber\\ &= \frac{1}{m-k}\biggl[B a_{mk}^{(1)} - \sum_{n\ne k} H’_{mn} a_{nk}^{(1)} \biggr] \nonumber\\ &= \frac{-1}{m-k}\frac{A^2}{2}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\delta_{m,k-2}+\delta_{m,k}+\sqrt{(k+1)(k+2)}\delta_{m,k+2}\biggr] \end{align} $$

となります。特に$m\ne k$の時だけ値が必要なので、

$$ \begin{align} a_{mk}^{(2)} &= \frac{-1}{m-k}\frac{A^2}{2}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\delta_{m,k-2}+\sqrt{(k+1)(k+2)}\delta_{m,k+2}\biggr],\hspace{1em}(m\ne k) \nonumber\\ &= \frac{1}{2}\frac{A^2}{2}\biggl[\sqrt{k(k-1)}\delta_{m,k-2} + \sqrt{(k+1)(k+2)}\delta_{m,k+2} \biggr] \label{x67b} \end{align} $$

となります。

5. 参考文献 #


  1. B. H. Bransden and C. J. Joachain, Physics of Atoms and Molecules (2nd Edition), Addison-Wesley(2003). ↩︎

  2. 問題を解く前に、解いた結果が大きく歪められるか否か分からないのに判断できるはず無いでしょう?と思うかもしれませんが、全くその通りです。実際に計算してみて、摂動論の結果が収束すれば適用範囲かもしれませんし、収束しないのであれば適用することができません。 ↩︎

  3. $\varphi_k^{(0)}$の係数第二項をどのように扱うか色々考えましたが、今のところ無視するしか思いつかないです。ここで出てきている理由は、二次の補正項\eqref{e66}を二階微分の形に書き直そうとすると、$\varphi_k^{(0)}$の成分が出てきてしまうためです。$\varphi_k^{(0)}$の係数を1とするテクニックとは別の原因で生じているため、勝手に消すこともできないと思いますが、どうなんでしょう…? ↩︎

  4. Abramowitz and Stegun, Handbook of Mathematical Functions. 22.7. Recurrence Relations ↩︎

  5. Abramowitz and Stegun, Handbook of Mathematical Functions. 22.2. Orthogonality Relations ↩︎