ブラケット記法の操作 #
本稿では、量子力学で登場するブラケット記法の扱い方について記載します。 ブラケット表記の詳しい説明はせず、どのような操作ができるか?に焦点を当てます。
1. 関数の表現 #
ψ(r)=⟨r|ψ⟩ψ(p)=⟨p|ψ⟩
|ψ⟩: 特定の基底による表現を用いない状態の記述1
ψ(r): 位置の表示による状態の記述
ψ(p): 運動量の表示による状態の記述
2. エルミート共役 #
演算子ˆAのエルミート共役をˆA†と表し、†を用いてエルミート共役を表現します。 また、ˆAの複素共役をˆA∗と表し、 ∗を用いて複素共役を表現します。
エルミート共役を作用させると、演算子やブラ、ケットに対し下記のような作用をもたらします。
|ψ⟩†=⟨ψ|⟨ψ|†=|ψ⟩
(ˆA†)†=ˆA
(ˆBˆA)†=ˆA†ˆB†
(ˆA|ψ⟩)†=⟨ψ|ˆA†
(c1|ψ1⟩+c2|ψ2⟩)†=c∗1⟨ψ1|+c∗2⟨ψ2|
(|ψ⟩⟨ϕ|)†=|ϕ⟩⟨ψ|
(⟨ϕ|ˆA|ψ⟩)†=|ψ⟩†ˆA†⟨ϕ|†=⟨ψ|ˆA†|ϕ⟩
(⟨ϕ|ψ⟩)†=⟨ψ|ϕ⟩
c1,c2: スカラー
演算子ˆAの逆演算子ˆA−1が存在するならば、次の関係式が成り立ちます。
(ˆA−1)†=(ˆA†)−1
3. 恒等演算子の挿入 #
状態|ϕ⟩が完全系を成すならば(または完全系であるための条件として)、恒等演算子ˆIを
ˆI=∫dϕ|ϕ⟩⟨ϕ|
と書き表すことができます。恒等演算子は演算に影響を与えない、いわば掛け算の1に相当するので、式の任意の場所に挿入することができます。
完全系をなす状態|x⟩を考えますと、例えばϕとψの内積を考えたとき、下記のような様々な変換が可能です。
⟨ϕ|ˆA|ψ⟩=⟨ϕ|ˆAˆI|ψ⟩=⟨ϕ|ˆA(∫dx|x⟩⟨x|)|ψ⟩=∫dx⟨ϕ|ˆA|x⟩⟨x|ψ⟩
上記のような変形や、ˆAの前にも追加して
⟨ϕ|ˆA|ψ⟩=⟨ϕ|ˆIˆAˆI|ψ⟩=⟨ϕ|(∫dx′|x′⟩⟨x′|)ˆA(∫dx|x⟩⟨x|)|ψ⟩=∫dx′∫dx⟨ϕ|x′⟩⟨x′|ˆA|x⟩⟨x|ψ⟩
など様々な変形が可能です。もし、xが位置を表しているならば、⟨x|ψ⟩=ψ(x)と状態|ψ⟩の位置表示なので
⟨ϕ|ˆA|ψ⟩≡∫dx′∫dxϕ∗(x′)A(x′,x)ψ(x)
となります。A(x′,x)≡⟨x′|ˆA|x⟩と置きました。