二体衝突後に物体が持ち得る速度

2体が弾性衝突(エネルギー保存)を起こす時を考えます。
目的は、衝突後に2体が持つ速度ベクトルを知ることです。

2体を
物体1… 重さ\(m_1\)
物体2… 重さ\(m_2\)
衝突前の速度ベクトルを\(\mathbf{v}^{(i)}_1, \mathbf{v}^{(i)}_2\)、
衝突後の速度ベクトルを\(\mathbf{v}^{(f)}_1, \mathbf{v}^{(f)}_2\)
と書くと、衝突後に考えられる速度ベクトルは、
\(
\begin{align}
\mathbf{v}^{(f)}_1&=R(\theta)(\mathbf{v}^{(i)}_1-\mathbf{V})+\mathbf{V}\\
\mathbf{v}^{(f)}_2&=-R(\theta)(\mathbf{v}^{(i)}_2-\mathbf{V})+\mathbf{V} \\
\end{align}
\)

と表せられます。ここで、\(\mathbf{V}\)は重心の速度ベクトルで
\(
\begin{align}
\mathbf{V}=\frac{m_1\mathbf{v}^{(i)}_1+m_2\mathbf{v}^{(i)}_2}{m_1+m_2}
\end{align}
\)

を表し、\(R(\theta)\)はユニタリーな回転行列を表します。衝突が起こる際の角度はこの式からは求められません、あくまで、衝突によって起こり得る角度です。
ここで示しているのは、いろんな方向に衝突が起こることを考えた時の表記で、衝突によって変化することが出来る速度ベクトルを表しています。

特に二次元上での衝突を考える場合、回転行列は
\(
\begin{equation}
R(\theta)=
\left(
\begin{array}{rr}
\cos\theta& -\sin\theta\\
\sin\theta& \cos\theta\\
\end{array}
\right)
\end{equation}
\)

と書くことが出来ます。

二体の衝突


ある2つの物体が衝突することを考えます。
下添え字を物体を区別する番号、上添え字を衝突前\(i\) (initial), 衝突後\(f\) (final)として記述すると、
物体1… 重さ\(m_1\), 位置ベクトル\(\mathbf{r}_1\), 速度ベクトル\(\mathbf{v}_1\)
物体2… 重さ\(m_2\), 位置ベクトル\(\mathbf{r}_2\), 速度ベクトル\(\mathbf{v}_2\)
と書けます。但し、ここでは衝突前、後を表す上添え字\(i,f\)は省いています。

また、重心の位置,速度ベクトル\(\mathbf{R},\mathbf{V}\)は
\(
\begin{align}
\mathbf{R}&=\frac{m_1\mathbf{r}_1+m_2\mathbf{r}_2}{m_1+m_2} \\
\mathbf{V}&=\frac{m_1\mathbf{v}_1+m_2\mathbf{v}_2}{m_1+m_2}
\end{align}
\)

と書けます。

続いて重心から見た物体1,2の位置、速度ベクトルを\(‘\)を付けて表しますと、

物体1(重心系)… 重さ\(m_1\), 位置ベクトル\(\mathbf{r}’_1\), 速度ベクトル\(\mathbf{v}’_1\)
物体2(重心系)… 重さ\(m_2\), 位置ベクトル\(\mathbf{r}’_2\), 速度ベクトル\(\mathbf{v}’_2\)
と書くことが出来ます。
ここで、重心系における速度ベクトルは明示的に
\(
\begin{align}
\mathbf{v}’_1&=\mathbf{v}_1-\mathbf{V} \\
\mathbf{v}’_2&=\mathbf{v}_2-\mathbf{V}
\end{align}
\)

と表すことが出来ます。

重心系から見ると重心の位置、速度ベクトルはもちろんゼロとなります。
\(
\begin{align}
\mathbf{R}’&=\frac{m_1\mathbf{r}’_1+m_2\mathbf{r}’_2}{m_1+m_2}=\mathbf{0}\\
\mathbf{V}’&=\frac{m_1\mathbf{v}’_1+m_2\mathbf{v}’_2}{m_1+m_2}=\mathbf{0}
\end{align}
\)

重心系から見た系の全運動量\(\mathbf{p}’\)もゼロにならなければなりません。
このことから、
\(
\mathbf{p}’=m_1\mathbf{v}_1+m_2\mathbf{v}_2=\mathbf{0}
\)

という関係式が成り立ちます。
この式が言っているのは、重心系を考える限り、物体1,2の速度ベクトルは\(\mathbf{v}’_1,\mathbf{v}’_2\)は衝突が起こる起こらないにかかわらず、上式が満たさなければならない、ということです。
繰り返しますが、衝突が起こる起こらないにかかわらず、です。

衝突が起こり、どの角度に飛んでいくか?を与えられた情報からでは決めることは出来ません。
実験結果や、物体の形状を表す別の条件式が必要となります。

ここで出来ることは、起こりうる角度を知ることだけです。
衝突後に起こりうる角度を求めてみましょう。
重心系では系の合計の運動量\(\mathbf{p}’\)がゼロベクトルにならなければなりません。
このことは衝突前後でノルムが変わる衝突は許されないことを示しています。
これは、重心系においてユニタリーな変換が許されることを意味しています。

衝突後に重心系で取りうる角度は重心系で考えられる角度方向全てなので、
ユニタリーな回転行列\(R(\theta)\)を用いて、衝突後に重心系で速度ベクトルが
\(
\begin{align}
\mathbf{p}’_1&\to R(\theta) \mathbf{p}’_1\\
\mathbf{p}’_2&\to -R(\theta) \mathbf{p}’_2
\end{align}
\)

を満たす変化のみ許される、ということです。マイナスの符号は、\(\mathbf{p}’\)がゼロでなければならないという条件からきているものです

実験系での表現に戻せば、運動量ベクトルは
\(
\begin{align}
\mathbf{p}^{f}_1&=m_1R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_1-\mathbf{V})+m_1\mathbf{V}\\
\mathbf{p}^{f}_2&=-m_2R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_2-\mathbf{V})+m_2\mathbf{V}
\end{align}
\)

であり、速度ベクトルは
\(
\begin{align}
\mathbf{v}^{f}_1&=R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_1-\mathbf{V})+\mathbf{V}\\
\mathbf{v}^{f}_2&=-R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_2-\mathbf{V})+\mathbf{V}
\end{align}
\)

と書き表すことが出来ます。
特に二次元の場合、デカルト座標において回転行列は
\(
\begin{equation}
R(\theta)=
\left(
\begin{array}{rr}
\cos\theta& -\sin\theta\\
\sin\theta& \cos\theta\\
\end{array}
\right)
\end{equation}
\)

と書くことが出来るので、
\(
\begin{equation}
\left(
\begin{array}{r}
v^{(f)}_x\\
v^{(f)}_y
\end{array}
\right)
=
\left(
\begin{array}{rr}
\cos\theta& -\sin\theta\\
\sin\theta& \cos\theta\\
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{r}
v^{(i)}_x-V_x\\
v^{(i)}_y-V_y
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{r}
V_x\\
V_y
\end{array}
\right)
\end{equation}
\)

と表現することが出来ます。

衝突角度について


衝突角度を簡単に推測してみましょう。
衝突に際し重要なのは、物体と物体が接する点における法線ベクトル\(\mathbf{n}\)だと推測できます。
恐らく、実験系において法線ベクトルを軸として、反転させた入射ベクトル\(-\mathbf{v}^{(i)}_{1,2}\)を\(\pi\)回転させる角度になるでしょう、と予測できます。
これは私の直感なので間違っているかもしれません。

ともあれ、必要な関係式は\(\mathbf{v}^{(i)}_1,\mathbf{v}^{(i)’}_1 \)を軸とした時の、実験系の角度\(\theta_1\)と重心系の角度\(\theta’_1\)との間の関係式です。

衝突後の速度ベクトルは
\(
\begin{align}
\mathbf{v}^{(f)}_1&=R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_1-\mathbf{V})+\mathbf{V}\\
\mathbf{v}^{(f)}_2&=-R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_2-\mathbf{V})+\mathbf{V}
\end{align}
\)

で表されていますので、実験系での角度、すなわち\(\mathbf{v}^{(i)}_1\)と\(\mathbf{v}^{(f)}_1\)のなす角度\(\theta_1\)は
\(
\begin{align}
\theta=\text{acos}
\left(
\frac{\mathbf{v}^{(i)}_1\cdot \mathbf{v}^{(f)}_1}{|\mathbf{v}^{(i)}_1||\mathbf{v}^{(f)}_1|}
\right)
\end{align}
\)

となります。
今、弾性散乱を考えているので、必要であれば\(|\mathbf{v}^{(i)}_1|=|\mathbf{v}^{(f)}_1|\)が成り立っています。
なので、
\(
\begin{align}
\theta=\text{acos}
\left(
\frac{\mathbf{v}^{(i)}\cdot [R(\theta) (\mathbf{v}^{(i)}_1-\mathbf{V})+\mathbf{V}]}{|\mathbf{v}^{(i)}_1||\mathbf{v}^{(f)}_1|}
\right)
\end{align}
\)

です。
変形すれば、
\(
|\mathbf{v}^{(i)}_1||\mathbf{v}^{(f)}_1|\cos\theta_1-\mathbf{v}^{(i)}_1\mathbf{V}=\mathbf{v}^{(i)}_1R(\theta’)(\mathbf{v}_1^{i}-\mathbf{V})
\)
という関係式が導けます。
この式は\(\theta\)と\(\theta’\)を結びつける式になっていますので、実験系での角度が分かれば、重心系での角度に焼直せるため、衝突した時の方向も決められるのです(簡単には求められなさそうですが・・・)。


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