実軸上の積分とコーシーの主値積分

結論


実軸上の積分とは、複素平面からの近づき方を指定して、
\(
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=
\frac{1}{2}\left[\lim_{\varepsilon\to +0}\int_{-\infty+i\varepsilon}^{\infty+i\varepsilon}f(x)dx+
\lim_{\varepsilon\to +0}\int_{-\infty-i\varepsilon}^{\infty-i\varepsilon}f(x)dx\right]
\end{align}
\)

と求められるようです
このように表現されていると考えなければ、\(\int_{-\infty}^{\infty} e^{ikx}/x dx\)の解が得られません。
図にするとこういう極限を取る、という意味です。

特に、実軸上\(x=0\)に1位の特異点が1つ存在する場合、
\(
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx=
\int_{-\infty}^{-\varepsilon}\frac{f(x)}{x}dx+
\frac{1}{2}\left[
\int_{\Gamma_+}\frac{f(x)}{x}dx+\int_{\Gamma_-}\frac{f(x)}{x}dx
\right]+
\int_{\varepsilon}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx
\end{align}
\)

と書かれます。ここで、\(\varepsilon\to +0\)である必要はありません

\(\Gamma_+\)は実軸上の点\(x=-\varepsilon\)から複素平面で、特異点のを通って実軸上\(x=\varepsilon\)に戻る経路、
\(\Gamma_-\)は実軸上の点\(x=-\varepsilon\)から複素平面で、特異点のを通って実軸上\(x=\varepsilon\)に戻る経路
です。

図では

という経路です。
右図の点線の経路でも積分結果が変わりません。なぜなら、点線と実線で囲まれた領域内に特異点が無い状況を考えているです。

コーシーの主値とは、複素平面の迂回部分を消した値であり、さらに\(\varepsilon\to +0\)を課した実軸上のみの積分結果です。\(x=0\)に1位の特異点がある場合、
\(
\begin{align}
\mathcal{P}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx=
\lim_{\varepsilon \to +0}\left[
\int_{-\infty}^{-\varepsilon}\frac{f(x)}{x}dx+
\int_{\varepsilon}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx
\right]
\end{align}
\)
と表現されるはずです。

コーシーの主値を用いて、本来の実軸上の積分を評価しようとすれば、
\(
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx=
\mathcal{P}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{f(x)}{x}dx+
\frac{1}{2}\lim_{\varepsilon\to +0}\left[
\int_{\Gamma_+}\frac{f(x)}{x}dx+\int_{\Gamma_-}\frac{f(x)}{x}dx
\right]
\end{align}
\)

と書けるはずです。ここで、複素平面を回る経路は特異点を回る半径を無限小にした時の値でなければなりません。

実軸上に特異点が無い場合、積分の\(\Gamma_{+/-}\)からの寄与はゼロになります。なので、コーシーの主値積分と本来の実軸上の積分は一致します。すなわち、
\(
\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=\mathcal{P}\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx
\)

が成立します。

特異点をずらす操作について


特異点が実軸上にある時、

  • 特異点を迂回する経路を通って積分
  • 特異点をずらして積分

の二通りが頻出します。結局は同じことをしています。重要なのは、特異点の上を通るか下を通るかという点のみです。
1位の特異点が実軸上に存在する時、特異点をずらす場合、ずらし方として
\(
\frac{f(x)}{x+i\varepsilon}, \frac{f(x)}{x-i\varepsilon}
\)
となります。
ここで、\(\lim \varepsilon\to 0\)を取らなければなりませんが、この操作の本質は、特異点の無い積分領域の端では実軸上にいなければならない、という要請から来るものです。

特異点周りを半径無限小で回らなければならない理由はありません。

なので、特異点をずらしてから実軸上に近づける操作は、上、もしくは下を迂回して積分することと同じです。

具体的な関数をずらした時はこんな感じ。\(\varepsilon=0.2\)にとって描画しています。

注意


これは私の解釈です。

以下の4つの計算が正しい場合、上記の解釈でなければ正しい結果が出ません。
ヘヴィサイド関数のフーリエ変換
1のフーリエ変換
\(x\)のフーリエ変換
\(1/x\)のフーリエ変換
\(1/(x^n)\)のフーリエ変換

しかし、上記の説明を行っている教科書、解説ページを見受けることはできませんでした。
なので、あくまで私が正しいと思い、この考えでないと導出が出来ず、また反例が今のところ見つかっていないだけです。

コーシーの主値に意味を見出すことができません。
実際に現れる値は(実軸上の経路)+(特異点周りをまわる経路)であるからです。

コーシーの主値でなければならない理由がありましたら、是非ともお知らせいただけると幸いです。
特異点の周りを半径+0で回らなくていいことは、具体的に複素平面上の数値積分を行って確かめています。


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